1027. 宝飾ギルドは
次に向かうのは宝飾ギルドです。
ここも短期間で力を貸すことができないと聞きました。
現状ではどうなっているのでしょうか?
「正直、あまり状況は変わっておりません。コンソールで技術を教えてほしいと頼んでも、それが新市街の住人たち相手だと伝えると断られてしまいます」
宝飾ギルドもかなり困った状況のようですね。
これでは先に進めないでしょう。
しかし、それでは困るのです。
宝飾ギルドだけ足踏みされても困りますからね。
「では、コンソール旧市街から簡単な技術を教えられる指導者を派遣するのはどうでしょう?」
「簡単な技術? どのような?」
「なんでも構いません。針金細工や銀細工程度から初めてみるのもいいでしょう。高価な宝石を使うことばかりに目を取られすぎです」
「な、なるほど、確かにそうかもしれません。幸い、聖獣鉱山のおかげで鉄や銀の貯蔵量には余裕があります。まずはそこから初めてみたいと思います」
ふむ、聖獣鉱山……。
それならば、あれも余っているはずでは?
「宝飾ギルドマスター、聖獣鉱山から出たクズ宝石はどうしているのです?」
「ああ、あれですか。申し訳ありませんが、あれもギルド内の教育に使わせていただいているのです。教材が減ってしまうのは厳しいところです」
「あれを教材に?」
「エンチャントの練習素材です。さすがは聖獣鉱山で採掘された宝石なだけあり、クズ宝石でもエンチャントをかけられるだけの強度があります。それを利用することでエンチャントが苦手な者の練習用となっております」
ふむ、なるほど。
しかし、それならば、最終的に手元にあればいいだけですね。
「宝飾ギルドマスター、それらは一度研磨しますよね?」
「はい、もちろん。原石のままではエンチャントができません」
「では、原石を研磨する工程の一部を新市街の住人に任せることは可能ですか?」
「ふむ……どうでしょう? 正直、他人に研磨を任せるのは心情的にも難しいですね。あと、宝石を不正に持ち帰られてしまうケースも考えられます」
「研磨を他人に任せるのは、最終的なカットを自分で行うということに慣れる意味合いでも構わないかと。それから、原石を売り払ったところでクズ原石ですから二束三文です。その上で、クズ宝石を持ち逃げした講習生がいたグループは次回以降の講習を受けさせないとしてしまいましょう」
「講習生同士で見張らせろと?」
「さすがに、それくらいはさせないといまの時点では信用できませんからね」
ちょっと厳しいかもしれませんが、ほかのギルドと比べて高価なものを扱うギルドですから仕方がありません。
少しずつ信頼関係を築いていきたいですね。
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