1026. 商業ギルドの状況

 次にやってきたのは商業ギルドです。

 ここは新市街に支部を設けるのは渋っていたところですね。

 状況は変わっているでしょうか?

 ちょっと商業ギルドマスターに話を聞いてみましょう。


「正直、あまり状況は変わっておりません。まずは基礎からの教育が必要です」


「やっぱりだめですか」


「はい。だめです」


 商業ギルドマスターいわく、いまの状況では支部を設けるほど人材が集まらないとのこと。

 新市街の商人たちは旧市街の商人に比べ、いろいろな面で知識と経験が劣っているようです。

 先にそこを埋めていかなければならない、それが商業ギルドの判断でした。


「正直に申しまして商業ギルドとしても、少額の融資を少数だけになら多少焦げ付いても気にしません。ですが、数が増えてくれば話は別でございます。いまの段階では基礎教育に時間を割く段階でしょう」


「それで新市街の商人たちは納得していますか?」


「ええ、納得しています。実際に簡単な商いの実践をさせ、簡単に騙されることを体感させております。いまの状況では商売にならないことは実体験で経験済みです」


 なんとも荒々しい。

 ですが、それが一番わかりやすいのでしょう。

 買付のためコンソールにやってくる商人たちは、一癖も二癖もある商人たちです。

 よい品をより安く買おうとあの手この手で迫ってきます。

 その取引の手間を最小限にするため、各ギルドは直営店以外での取引をすべて商業ギルドに委ねているのです。

 直営店での販売は個人に対してのみ。

 これならば大量買い付けは簡単にできません。

 各ギルド、それがわかっているからこそ商業ギルドを間に挟むのです。


「それで、スヴェイン殿は裏社会のボスにでもせっつかれて来たのですかな?」


「いいえ、違います。錬金術士ギルドに新市街からの入門希望がたくさん届いているため、ほかのギルドの動向を確認して回っているのです。新市街との融和も本腰を入れて行う段階ですからね」


「なるほど。それでしたら、商業ギルドとしても力を貸しましょう。いまでは週に1回しかやっていない講習のペースをより短くして受講できる人数を増やします。いまの段階で商業ギルドが積極的に手を貸せるのはそこまでですね」


「いえ、それだけできるのでしたら十分です。貴重な時間を割いていただきありがとうございます」


「こちらこそ。新市街との融和はどこかのギルドだけが突出しすぎてもいけませんし、逆に一部のギルドだけが極端に遅れてもいけません。情報を伝えてくださりありがとうございます」


 商業ギルドも積極的に動いてくれるようでなによりです。

 次はどこのギルドを回ってみましょうか。

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