1017. トラージュの捕縛

 僕たちはトラージュを追い、衛兵数名とともに下水道へと降りました。

 覚悟はしていましたが、ひどい臭いですね。

 それでは失礼して。


「ピュリフィケーション」


「また臭い消しに浄化の魔法かよ。まあ、お前の魔法力なら問題ないのだろうが」


「ええ。それでは水路が分かれるところまで、全員で進みましょう」


 下水道には基本的に重いふたで閉じられており、一般市民が立ち入れる場所ではありません。

 それこそ、下水道に直接繋がるルートがあるような屋敷くらいからしかアクセスできないでしょう。

 しかし、そのような屋敷があるのは、旧市街の一部の邸宅のみ。

 新市街でそのような屋敷が建っているとは聞いたことがありません。

 新市街のことですから、ちゃっかり建っているかもしれませんが、そこも警備は厳重でしょう。

 さて、そんな袋小路に逃げこんだネズミはどうするべきか。


「お、道が分かれてるな」


「では、班を分けましょう。僕たちは右側を見てきます。ティショウさんたちは左側を見てきてください」


「わかった」


 こうして、何回か班分けして細かい枝葉まで調べていくと、ついに待ちに待った報告が富んできました。

 トラージュの発見報告です。


「それで、トラージュはいまどうしていますか?」


「どうやら別の入り口から出ようとしていたようですが、開けることができず、もがいていたところを我々が発見しました。そのあとは、槍を振るって抵抗してきていますが、所詮は素人剣術、敵ではないですね」


「もう捕らえたのですか?」


「どうでしょう? 怪我をさせないようにするため、疲れ果てるのを待っている状態でした。ひょっとするともう捕縛しているかもしれません」


「逃げられないのでしたら十分です。急ぎましょう」


 どうやら、トラージュは下水道のふたを下から押し上げることの大変さに気が付いていなかったみたいですね。

 上で持ち上げるのも一苦労なんですが、それでも足場はしっかりしています。

 逆に下から押し上げるのは、足場がしっかりしていない状態から重いかたまりを押し上げなければならないので、さらに重労働なんですよ。

 そこを見誤りましたね。


「どうやら、もう取り押さえてあったようですね」


「そのようです。多少怪我はさせたみたいですが、傷口を洗って治してやれば命に別状はないでしょう」


「そうですね。それで、トラージュの持ち物は?」


「それが……槍だけではなく回復用のポーションを数本持っていました。どれも高級品以上です」


 高級品以上の回復ポーション、そんなものを買えるだけの資金はトラージュになかったはず。

 これは余罪が出てきそうですね。

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