1016. トラージュの行方を追って
処分をどうするかは具体的に決まりませんでしたが、とりあえず身柄の確保です。
余罪が増えていればなにか重罪に問える可能性もあります。
いえ、騒ぎをこれ以上大きくしていてはもらいたくないのですが。
「お前たち、脱獄囚は見つかったか?」
新市街に移動し、警邏をしていた衛兵に声をかけます。
ですが、衛兵たちは力なく首を振るだけですね。
「いえ、いまのところ発見できたという報告は上がっておりません。スヴェイン様と親交のある、この街の裏社会がかくまうとは思えないのですが……」
「そっちは、まあ、スヴェインに任せるとしよう。お前らは表の警備を厳重にするんだ」
「はっ! かしこまりました、ティショウ様!」
ふむ、やはりまだ逃げおおせていますか。
裏社会のボスからも接触がないということは、あちらもまだ確保していないのでしょう。
そこまで頭が回る男なのか、少々疑問ですね。
「なあ、スヴェイン。あの男はどこに行ったと思う?」
「そうですね……。この街に土地勘があるとは思えません。所持品も一切を取り上げられているのでお金もないでしょう。ティショウさん、彼に奪われた物は?」
「衛兵の装備していた槍くらいだ。衛兵の服も脱がせるつもりだったようだが、ほかの衛兵に見つかりそうになって諦めたらしい。それ以外の所持品はまだ牢屋の保管庫にあることが確認されている」
「なるほど。衛兵の持っていたお金とかは奪われていないのですね?」
「そっちも大丈夫だな。ってなると、やつは完全な無一文だ。表通りを歩いても得られるものはなにもねぇ。裏道か?」
「そちらの方が可能性は高いでしょう。ただ、そちらはそちらでボスの手の者が警備しているはずです。これだけ時間が経っているのですから、彼女たちが取り押さえていない可能性は低いでしょう」
「あーもう! どこに逃げこんだんだよ、あいつ!」
さて、どこに逃げこんだんでしょうね。
新市街に逃げこんだのは目撃者もいるので確実です。
一般人が衛兵の槍を持っていれば嫌でも目立ちます。
そんな恰好で表通りを歩けばコンソールの警備兵が、裏通りを歩けば裏社会のボスの手の者が行く手を阻むでしょう。
となると、行き先は……。
「……ここですね」
「下水道かよ」
「普段はふたが閉まっているはずなのに開いています。そして、衛兵も裏の手の者もすぐには調べない場所となれば、普段誰もいない下水道でしょう」
「……それは一理あるか。さて、どうする、スヴェイン。下水道と一言で言ったが、新市街に張り巡らせた下水道も一本道じゃないぞ?」
「衛兵を集めましょう。あちらも地下に降りてしまえば方向を完全に見失うはず。それに、この下水道を通って街の外部には出られません。第二街門の外に出ることすら不可能です。各街門の衛兵には厳重な取り締まりを徹底させ、各地の下水道入り口は衛兵に見張らせましょう」
「わかった。実際に中を調べるのはどうする?」
「そちらも余剰人員を使っての人海戦術です。もうモンスターは下水道にいないはずですが、早めに確保したいですからね」
それにしても、下水道ですか。
本当に懐かしいですね。
あまり入りたくない場所ではありますが、これもお仕事だと思い諦めましょう。
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