1001. 新年祝賀祭

 僕は復興パーティに先立って行われる、新年祝賀祭へと足を運びました。

 この催しは、ギルド評議会が主催となり、コンソール市民向けにお酒や果物などを配るお祭りです。

 もちろん、旧市街の住人だけではなく、新市街の人間たちにも配られる手筈になっています。

 僕はティショウさんと一緒に、新市街への配布が問題なく行われているかの確認ですね。

 さて、問題は起きていないのでしょうか?


「……ん? スヴェイン、あいつ、評議会の人間じゃないか?」


「そうですね。お酒などの配布場所の設営に来てくれた方々のはずですが、取り囲まれて身動きができなくなっています」


「これは面倒なことになっているな」


「そうですね。申し訳ありませんが、力尽くでも……」


「その必要はない」


 僕が無理にでもあの集団をこじ開けようとしたところ、後ろから手をつかまれてしまいました。

 気配の消し方といい、力強さといい、一般市民ではありませんね。

 裏社会のものでしょうか?


「ボスからの伝言だ。自分たちの不始末は自分たちでつける」


「つまり、あの人だかりを散らしてもらえるんですね?」


「そうすれば酒と果物を配ってくれるんだろう? それなら問題ない」


「旧市街ではパンもセットですよ。よく味わって食べてください」


「そいつは助かる。お前ら、さっさとあいつらを落ち着かせるぞ」


「はい」


 裏社会の男たちは群衆の中に分け入ると、すぐに混乱を治めてくれました。

 どうやら、コンソールギルド評議会側が十分な酒と果物、それにパンを用意していることを教えてくれたようです。

 さて、これなら大丈夫でしょう。

 足りなくなったときのために、また補充をしなければなりませんが。


 ほかの配布場所も回りましたが、どこも同じように裏社会から派遣されてきたと思われる男たちが用心棒として立っていました。

 やはり、ギルド評議会の名前だけではまだ信じてもらえないということなのでしょうね。

 もっと関係を深くしていかないと。


「ああ、コンソールの怪童、ここにいたのか?」


 僕に声をかけてきたのは、いつも連絡役をしてくれる女性です。

 それでも普段より華々しい姿をしているのは、新年に合わせているということなのでしょうね。


「裏社会のボスがお呼びですか?」


「いや、今日は伝言だけだよ。こんだけの支援をしてくれて助かる、ってさ」


「本来ならば彼らもコンソール市民なのです。去年までは旧市街のみで完結していた祝賀祭を壁の外にまで広げただけのこと、本来やるべきだったことをしているにすぎませんよ」


「それでもだよ。去年の冬はなにかと暗い話題が多かったが、これで少しは明るくなってくれるってもんだ」


「そうなってほしいものです」


 彼らもまたコンソール市民なのです。

 本当の意味でコンソールに迎え入れられるのはいつになるでしょうね?

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