1002. 続・新年祝賀祭

 彼らをいつ受け入れられるかと見送りながら、今度は新市街にある聖獣の泉へとやってきました。

 そこでもまた、別の意味でのトラブルが発生してます。


「やー! 私は牛さんに乗る!」


「狼は僕が先だ!」


「私は虎さんがいいな」


『いや……。まあ、背中に乗せるのは今日だけだぞ』


『それもそうだが、仲良く順番を決めてもらいたい。我らの背とて何人も乗せられぬ』


「はーい!」


「どうやって決めようか?」


 どうやら新年のお祝いということで、普段乗れない聖獣の背に子どもたちを乗せることにしたようです。

 その結果として順番で揉めてしまっていたようですね。

 いまは仲良く順番決めをしているので大丈夫でしょう。


「皆さん。こちらは大丈夫ですか」


『これはスヴェイン様。病み上がりですのに出歩いても大丈夫なのですか?』


「僕もコンソールギルド評議会議員なのです。新年祝賀祭がうまくいっているか確認する義務があります」


『そ、そうでしたか。こちらはあまり問題ありません。先ほどのように子どもたちが我らの背に乗る順番で揉めるなどはありますが、そのくらいで平和そのものです』


「わかりました。ですが、気は抜かないように。相手はどこから襲ってくるのかわかっていないのですからね」


『かしこまりました』


 こっちはこれで大丈夫でしょう。

 子どもたちにもお祝いのお菓子やフルーツが配られているはずですが、フルーツは聖獣の泉に行けばある程度は食べられますからね。

 子どもたちにとっては、普段乗れない聖獣の背中の方がよっぽど興味深い内容なんでしょう。


 さて、ここも大丈夫そうです。

 次は……繁華街に行ってみましょうか。

 先にティショウさんも行っているはずですし。


「おう、きたか、スヴェイン」


「はい。ここは大賑わいですね」


「だな。ギルド評議会からの支援が出るんで安くメシを出せるんだ。この機会に食っておきたいんだろう」


 今日は街の食堂などに対しても補助が出ています。

 販売価格を下げればその差分をギルド評議会が補填するというものです。

 それで、この人だかりですか。


「まあ、それだけじゃないんだろうけどな」


「それだけじゃないとは?」


「料理ギルドのババァの手が入ってるんだよ、この店は。結果として、かなり料理の質が改善しているはずだ。それで、この賑わいってわけだよ」


「なるほど。それで」


 コンソール旧市街基準のお店となれば新市街では重宝されるでしょう。

 それがこの機会に爆発したようですね。


「しかし、普段は多少高いからってあまり人が入ってなかったって給仕の連中から聞いたが、これも評議会の補助が出ている間だけかねぇ?」


「いえ、そんなことはないと思いますよ?」


「ほう? どうして言い切れる?」


「一度美味しいものがあると知った以上、またそれを食べたくなるのは生物として当然です。今度はそれを目的として生活するようになるでしょう」


「あー、野生動物を駆除しなきゃいけない理由と一緒か」


「人間だって動物ですからね」


 とりあえず、ここもこれくらいで問題なさそうです。

 僕の見回りはこれくらいにさせてもらい、夜のパーティの準備ですね。

 アリアとリリスが同行してくれるようですが、気が重い。

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