英才教育機関稼働
686.錬金術師英才教育機関完成
コンソールに戻ってきたあとはシャルとの約束通りオルドの様子を見に行きました。
見に行きましたが……やはり遅延していましたね。
仕方がないので書類仕事のやり方を一通り教え、シャルが帰ってくるまでに完遂していなければ本当に指輪を投げ返されるとも付け加えて発破をかけてあげます。
あと、オルドの妹フランカがディーンの婚約者に収まり来年挙式だとも告げて。
三日後に様子を見に行けば書類の山は大分減っていましたし間に合うんじゃないでしょうか。
僕は僕で夏の三カ月目に入ったらやることがあるため、忙しくなりますし責任は持てません。
さて、今日の僕の用事ですが街のとある場所へと出かけることです。
先日、魔導具の設計図を売った功績を認められ、アリアからマサムネの騎乗を認められたミライさんにハービー、アシャリさんも連れて。
「おう、来たか錬金術師ギルドマスターども」
「はい。お待たせしました建築ギルドマスター」
「待たせちまったが完成したぜ、錬金術師ギルドの英才教育機関だ」
今日の目的、それは錬金術師ギルド所属の英才教育機関を受け取ることでした
冬の終わり頃から頼んでいたので夏の終わりまでに完成してくれてよかったです。
「それにしても錬金術師ギルドは既に英才教育機関を動かせる状態かよ。うらやましいぜ」
「建築ギルドは難しいですか?」
「難しいな。公太女様に頼んで俺を含めた何名かをシュミットの建築ギルド英才教育機関に連れて行ってもらったが……しばらく真似できそうにもない。本当の年少組は積み木模型で家を組み立てているだけだったが、七歳くらいからは実際にハンマーと釘を扱わせての箱作り。そのあとも段階を経てステップアップしていってやがった。最後は小屋サイズとは言え家づくりだったからな。あれを十歳までに終わらせているってのが恐ろしい」
「そう言えばシュミットの英才教育機関は十歳まででしたね」
「ああ。そのあとはギルド通いで腕を磨くそうだ。基準も厳しいらしいがな」
「シュミット錬金術師ギルドの卒業基準はミドルポーションの五割作製らしいです。いまのシュミット公国では上薬草栽培なんてお手の物ですからね」
「それって高いのか? 低いのか?」
「講師育成所ではニーベちゃんとエリナちゃんが黙っていられず講義に入った程度です」
「『カーバンクル』基準じゃ形無しだな」
「建築ギルドの卒業基準は聞いてこなかったんですか?」
「おう、聞いてきたぞ。このあたりの国家一帯じゃ建築ギルドがすべての建築を受け持っているから参考程度だったがな」
「ちなみにどの程度の基準でしたか?」
「親方の中でも上位層じゃないと卒業を認められないレベルだ。シュミットは厳しいぜ」
「そうでしたか。さて、このまま立ち話もなんです。建築ギルドマスターもお忙しいでしょうし、中の説明をお願いします」
「おう。任せろ」
僕たち五人は真新しい建物の中に足を踏み入れます。
いかにも新築の建物らしい空気がただよっていますが、まあそれは換気などをすれば大丈夫でしょう。
「一階は受付と事務室、それから待合スペースなんかだ。事務室の机なんかは商業ギルドに発注してくれ」
「わかりました。ミライさんとアシャリさんは内覧が終わったらそちらの作業に。本部から人員を連れてきても構いません」
「了解です」
「かしこまりました、ギルドマスター様」
「一階はこれしかないな。次、二階だ」
僕たちは階段を上って二階へ。
ここは実際の研修部屋があるスペースですね。
「要望通り五十名分ずつ三部屋だ。これだけでよかったのか?」
「十分です。講師担当が三人しかいませんからね。この先も僕がいる間は英才教育機関で受け入れられる人数は制限します。ハービー、あなたの代になったら要望を聞いて講師の増員と増築などを考えなさい」
「はい、ギルドマスター」
「とりあえず一通りのアトリエ設備は揃えてある。もうその辺の工事はなれたもんだからな」
「ありがとうございます。念のため、確認しても?」
「おう。頼む」
僕たちは一部屋一部屋入念にチェックして歩きましたが特に問題はなし。
本当にアトリエ工事は手慣れていますね。
「さて、最後は三階だな。こっちは講師どもの部屋だが最初は三人だけなんだろう? 広すぎないか?」
「広すぎても仕方がないでしょう、いまは。将来どうするかはハービーとアシャリさんが相談してください。最初の講師三人はセティ師匠が直接鍛えた講師なのでひとりひとりで一部屋ごとを回せます。ですが、その技術継承をする上ですべてを受け継いでいけるかはわかりません。そこも見据えた講師の配置を。最低でも第二位錬金術師になったものから選抜してください」
「「わかりました」」
「本当に錬金術師ギルドは次期に向けた引き継ぎを始めているな。いや、お前さんの代では今の体制で回っちまうのか」
「回ってしまうんですよ。問題は無理矢理送り込まれてくる子供の数だけで」
「親世代の問題か。そこの対策もしてあるんだろう?」
「対策用の備品は置いておきます。なるべく活用してほしくないですが」
「親世代はなあ。どうしても『職業優位論』のあおりを受けていたせいで少しでも有利な条件をつけたがるだろうよ」
「それは理解しています。ただ、毎回受け入れる子供の数も定員百五十名。二週間に一度しか同じ子供には受けさせない予定だそうです。なので週三日開催で三百名ですね」
「週三日開催か。講師陣はもつのか?」
「本人たちからそれで大丈夫と申告がありました。開催日を三日間連続にして講習終了後は全員で集まって見直し。三日が終わったあとは全体の流れを総括して効率的な指導方法などがないか計画。残り二日間を休みにするそうです」
「それなりにハードだな。だが、最初はそれで回してみるしかねえのか」
「はい。本人たちの体調チェックに僕も毎週訪れます。無理がありそうだったらスケジュールの再調整を命じる予定ですね」
「無理はさせねえこった。三階の研究用アトリエ部屋も確認を頼む。講師用の部屋なんかは机とかを入れてねえ。そっちも商業ギルドに発注だ」
「わかりました。僕とハービーはアトリエの確認をします。ミライさんとアシャリさんは講師の個室と会議室などをチェックしてください」
「「「はい」」」
手分けしてそれぞれの部屋を確認し、不備がないかを入念にチェック。
さすが建築ギルドの仕事だけあって問題ありません。
「確認は終わったか?」
「はい。今回も立派な建物ありがとうございます」
「気にすんな。こっちも仕事だ、手は抜かねえよ。スラム連中は錬金術師ギルドの仕事だってんで普段以上にやる気がみなぎっていたしな」
「相変わらずですか」
「相変わらずだ。そんじゃあ、こいつが鍵だ。引き渡し終わったぜ」
「ええ。確かに受け取りました」
「じゃあ、またな」
帰っていく建築ギルドマスターを見送ったあと、ミライさんとアシャリさんは早速行動を開始しました。
本部の事務員たちを引き連れてきて各所に必要な事務用品を決めていきましたね。
僕とハービーはこれ以上いても邪魔でしょうし錬金術師ギルドに戻っていましょう。
事務員採用面接はミライさんとアシャリさんの方で僕の帰省前には済ませているそうですし、ある程度事務用品が揃ってくれば講師三人の出迎えですね。
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