927. 二日目、午後

 午後最初の目標は取り逃がした邪竜の古代竜エンシェントドラゴン3匹の捜索からでした。

 やつらの所在をはっきりさせておかなければ、今後の戦闘にも響きます。


 最上位竜たちも動員して調べた結果、やつらは再び邪竜族の群れの真ん中に戻っていることがわかりました。

 ただ、気になるのは遠目で確認したところ、その体に傷痕が見当たらなかったということです。


 僕が付けた傷もありますしカイザーが付けた傷もあります。

 なにより、数年前に受けていたはずの傷もまだ残っているはずなのですが、どういうことでしょう?

 今回は慎重に戦う必要がありそうですね。


 それから、気になった報告としては、邪竜族の数がかなり目減りしているらしいとの報告がありました。

 毎日攻撃して減らしてはいたんですが、それを考慮しても今日の減り方は異常に早いそうです。

 ここにも何か仕掛けがありそうですね。


 ともかく、僕は古代竜エンシェントドラゴンの相手しないと。


「グゥゥァ?」


「ガァァ!」


 やはり近づくとさすがにばれますか。

 長距離からの一撃ではまともな攻撃力がないと判断しての行動でしたが、あまりいい選択肢ではなかったようですね。

 さて、ここからはどう行動しましょう?


「ガァァ」


「グゥゥゥ」


 おや?

 古代竜エンシェントドラゴンは僕に気が付いているのですが、襲いかかろうとしてきませんね。

 むしろ必至になってなにかを食べているような。


 あれは……邪竜!?

 共食いをしているのですか!?

 ひょっとして怪我が治っている理由はこれでしょうか?

 弱めの攻撃を当てて確かめてみましょう。


「セイクリッドブレイズ!」


 極限まで圧縮された聖炎が古代竜エンシェントドラゴンの翼膜を焼き、小さな穴を開けます。

 しかし、古代竜エンシェントドラゴンはそれを気にすることはなく邪竜を食べ続け、やがて翼膜の穴もふさがってしまいました。

 これは確定ですね。


「先にあふれ出してきていた邪竜族は古代竜エンシェントドラゴンの餌でしたか。あとは転移の種がわかればいいのですが」


 十分に邪竜を食べ終わったのか、古代竜エンシェントドラゴンたちは立ち上がりその巨体を僕の方へと向けます。

 一体なにをしてくるのか。


「ゴァァァ!」


「ガァァァ!」


「いきなりブレスからですか!?」


 僕はとっさに防御結界を張り、3匹の様子を確認します。

 防御結界はブレスのように爆発を起こさないためあちらの様子がよくわかりましたが、古代竜エンシェントドラゴンの体が灰のように崩れてなくなっていくのが確認できました。

 そして、その灰が邪竜族の亡骸を消し去りながらカイザーの方へと飛んで行くのも。


「なるほど。古代竜エンシェントドラゴンにとってほかの邪竜族は、餌であり転移のための道具ですか。これは厄介ですね」


 古代竜エンシェントドラゴンの転移や回復を防ぐには邪竜族を倒してその亡骸まで浄化しなければいけない。

 だが、邪竜族の数はまだ十分過ぎるほどに多い。

 さすがにこれは厳しいですね。


 コンソールへ直接襲撃をかけないのは、コンソールへ向かう線の上にカイザーがいるため邪魔なのでしょうか?

 ともかく、カイザーの手助けにいかないと。

 そろそろもう1匹の追加で呼んであった聖竜の古代竜エンシェントドラゴンも到着するはずですし、戦況が変わるといいのですが。

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