928. 二日目、夕刻

 僕がカイザーの元に戻ると、増援として呼んでいたもう1匹の古代竜エンシェントドラゴンの聖竜がすでに駆けつけており、邪竜の古代竜エンシェントドラゴンとも互角に立ち回っていました。

 そこに僕が駆けつけたのですから、形勢は一気に僕たちの側に傾きます。

 そうなると、当然邪竜たちはブレスを放って逃げだそうとするのですが……そう簡単に逃がしませんよ!


「カイザー! 全力のブレスです!」


『わかった。しかし、よいのか? あれを放てば、丸1日はブレスを打てなくなるが』


「問題ありません。さあ、早く!」


『承知した。邪竜の小童ども、元聖竜の帝のブレス、とくと味わえ!』


 カイザーが宣言すると、その口から極太のブレスが吐き出されます。

 その太さはカイザーの体躯の数倍以上まで膨らみ、邪竜たちを飲み込みました。

 かろうじて1匹だけブレスの中から出てきた邪竜がいましたが、残りの2匹は出てきません。

 ブレスの津波が終われば、その中から骨の欠片となった邪竜の古代竜エンシェントドラゴンが2匹分出てきて地面に落ちる前に輝きながら消えていきました。

 どうやら討伐完了なようですね。


 そうなると、もう1匹が気になるところですが、あちらも逃げの一手を打ったようです。

 ただし、いままでのようにブレスを放ってその隙に消え去るのではなく、普通に飛んで逃げています。

 その速度も、カイザーのブレスを受けたあとであるため、非常に遅く、もたもたしたスピードでした。


「カイザー。僕はあれにとどめをさしてきます」


『わかった。だが、油断はするなよ』


「わかっています。ブレスで攻撃するだけですって」


 僕も竜の帝の力を解放し、ブレスを放つ準備を始めます。

 なかなかこれが手間なんですよね。


 準備ができると、僕は竜の帝としてのブレスを放ちました。

 ブレスというより、極太のエネルギー波ですかね?

 ともかく、それを逃げ出した邪竜の頭に当て、邪竜の頭を消し去りました。

 頭を失い、地面に落下しそうになった体を、胸から順に焼き消していき、地面に落ちる前に全身を焼失させます。

 これで討伐完了ですね。


『これで、いままで確認できていた古代竜エンシェントドラゴンはすべて討伐か?』


「そう……だと思います。あちらの古代竜エンシェントドラゴンはブレスを放ったあと、灰のようになって移動する習性がありました。今回倒した肉体が本体なのか、それともただの灰のかたまりなのか、見分けがつきません。通常の邪竜を食べて傷を癒やしていたことから、今回倒した古代竜エンシェントドラゴンはただの灰と考えても問題ないでしょう」


『面倒だな。これから本体が殴り込んでくる可能性があるのか』


「ですね。ただ、あちらも今回のことで、こちらに遊撃可能な古代竜エンシェントドラゴンがいることを知ったはずです。僕ひとりでは古代竜エンシェントドラゴン3匹相手をするのに手こずることもありましたが、もう1匹古代竜エンシェントドラゴンが仲間にいるなら、そう手間取ることもないでしょう」


『もう手を退いてくれるとありがたいのだがな』


「まったくです」


 本当に帰ってくれませんかね、あの邪竜たち。

 邪竜族の巣の場所は知らないんですから、わざわざ襲撃することもないのに。

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