17.錬金術、半年間の成果
お父様に命じられた期限の半年間、僕はひたすら錬金術の修練を行います。
幸い薬草や魔草といった素材には困らないため、腕前はみるみるうちに上達しました。
結果、3カ月でポーションは完璧に成功、半年でマジックポーションまで作成できるようになったのです。
「……よし、マジックポーション、これも完成です!」
「おめでとうございます、スヴェイン様!」
「……おめでとう、スヴェイン様。どれも最高品質品ばかり。とても6歳が作ったとは思えない出来映え」
「ありがとうございます、ムノンさん。ムノンさんに魔力操作を教えてもらってからポーション作りがより一層楽になりました」
「……私はコツを教えただけ。あなたは最初から魔力操作ができてた」
「そうですよ、スヴェイン様。私なんてまだまだ魔力操作で手こずるんですから」
アリアもこの半年で他人との付き合い方を覚えてきました。
大人の男性はいまだに苦手なようですが、女性はなんとかなっています。
ムノンさんを初めとする冒険者さんたちにもいろいろと習っているみたいですしね。
「……アリア様も筋がいいってチクサが褒めてました。同じくらい魔力操作ができるようになるのは、貴族でも8歳くらいにならないと無理だって」
「私はスヴェイン様に追いつくだけで必死なのです。本当にすごいのはスヴェイン様です」
「……それは本当にそう思います。いつの間にか回復魔法も覚えてるし」
「あはは……。見よう見まねで試していたらできたんですよね」
午前中に行われている剣術の稽古は激しいものです。
特にディーンはあと数カ月で『交霊の儀式』ですから稽古も熱心になっています。
その結果として打ち身や打撲などの怪我も多いわけで、その都度お母様が回復魔法で治療していました。
それを見ているうちに回復魔法の魔力の流れとでもいうのでしょうか、それがわかるようになり試してみると微弱ですが回復魔法が発動するようになったのです。
「……普通は専属の教師から教えを請うか魔術書をみて学ぶもの。魔法をみるだけで覚えられるのはすごいです」
「ありがとうございます。それでは、このポーションを箱詰めしてお父様のところに運びましょう」
「……力仕事になるからクオたちも呼んで来ます。少し待っててください」
できたポーション類は、お父様を通じて領軍や街に卸されているそうです。
詳しい話は聞いていませんが、かなり回復薬の供給量が改善されているんだとか。
クオさんたちが来たら、今回もまた運んでもらわなくちゃですね。
僕のマジックバッグは、薬草畑の管理をしている5人とアリアの6人だけしか知らないものですので。
きちんとポーションが運ばれているという事実作りが必要なのでそうです。
「どうやら今日もポーションができたようだな」
「お父様」
お父様がこの部屋に来るなんて珍しい。
なにかあったのでしょうか?
「ムノンは一緒ではなかったのか?」
「ムノンさんはポーションを運んでもらうため、クオさんたちを呼びに行きました」
「そうか、入れ違いになってしまったか。では、ここで待つとしよう」
「旦那様、お茶をご用意いたします」
「いや、必要ない、リリス。用件を伝えたらすぐに執務に戻る」
「かしこまりました」
「手伝いに来たぞ、スヴェイン様。……シュミット辺境伯もご一緒でしたか」
「かしこまらなくともよい。お前たちに伝えたいことがあってきたのだ」
「なんでしょうか?」
「明日からスヴェインとアリアに魔法を教えてほしい。教えられない属性はあるか?」
「時空属性以外でしたら一通り教えられますわ。ただ、教本があると助かります」
「教本なら全属性分揃っている。明日からよろしく頼む」
「かしこまりました」
「スヴェイン、明日からは魔法の修練がメインだ。マジックポーションまで確実に最高品質品を作成できるのであれば、これ以上錬金術のレベルは上がらないだろう。ポーション作りは3日に1度としてそれ以外の日は魔法の修練に励め」
「はい。お父様」
「アリアは毎日だな。できるか?」
「もちろんです。頑張ります」
「よろしい。ではな」
いよいよ魔法の修練も開始ですか。
これまで以上に忙しくなりますが望むところです。
まずは完成したポーションを保管室に運んでから、魔術書を読んで予習ですね。
明日から頑張りましょう。
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