732. エリナの帰郷:七日目 リノの村にお出かけ
帰郷七日目、今日が折り返し日だ。
ボクたちはリノさんに会いに行くことにした。
リノさんと会うのも2年ぶり。
元気にしているといいんだけど。
「見えてきたのです! 聖竜が居座っている村なのです!」
「やっぱり聖竜はまだいたね」
「きっとまだまだいるつもりなのです」
村の中に直接降りるわけにはいかないので近くに着陸。
門番さんは2年前にボクたちと会ったことがある人で、リノさんに会いに来たと言ったらすぐに村の中へ入れてくれた。
話が早くて助かるよ。
ただ、『リノさんの家に住んでいる番犬には気を付けろ』と言われたのが気にかかる。
リノさん、そんな危険な番犬を飼うようになったのかな?
ふたりで番犬の正体を想像し、あれこれ話しているとリノさんの家が見えてきた。
それと一緒に『番犬』の姿も見える。
うん、あれは気を付けなくちゃいけないやつだ。
「こんにちはです、聖竜さん。こんなところでなにをしているのです?」
『番犬』の正体は大型の犬サイズまで小さくなった聖竜だった。
確かに気を付けないと焼き払われちゃうよね。
よほどのことでもしない限りそんなことはないと思うけど。
『ん? 『竜の至宝』か。私は仲間の宝を守るのを手伝っている。私自身もあの娘は気に入った』
「なにから守っているんですか? この村の近くに凶悪な魔物でも出たとか?」
『もっと面倒なものだ。具体的にはこの村に住み着いた錬金術士だな』
「錬金術士? この村に錬金術士が住んでいるんですか?」
『左様。だが、素行があまりよろしくない。薬草の種を持っていないようだったのでリノが何個か分けてやったが、種を腐らせてしまい薬草を採取できなかったそうだ。その後もリノに薬草の種をよこせと迫り続け、終いには薬草の葉どころかポーションをよこせと言い出す始末。あれは本当に錬金術士か?』
「私たちに聞かれてもわからないのです」
「様子を見てくることはできますけど……どうしますか?」
『必要ない。わざわざ『竜の至宝』の手をわずらわせるほどの問題ではないからな。それに彼の錬金術士は村人からも疎まれ始めている。コンソールの錬金術士ギルドを卒業してきたと大言を放って村に入り込んできたのに作るポーションの質は『治癒術士』であるリノ以下。その上、リノが診療に行く途中を見計らってしつこくつきまとうせいでリノの仕事にも影響が出ている。間もなく村から追い出されるであろう』
「コンソールの錬金術士ギルドから卒業した錬金術士なんてひとりもいないのです……」
「破門になった錬金術士だね、そいつ」
『だろうな。『竜の帝』があのような半端者を認めるはずもない。……と、すまん、話し込んでしまった。リノに用事なのだろう? 入るといい』
「では、お邪魔するのです」
「聖竜もお仕事頑張ってください」
『無論だ。宝を守ることこそ我らの誇り。決して傷つけさせはしない』
うーん、コンソールの錬金術士ギルドを破門になったって言うことは、多分支部の錬金術士だよね。
支部の錬金術士って薬草栽培の方法を詳しく知らない人がほとんどだったような。
……気にしても仕方がないか。
リノさん、この2年の間にどう変わったかな?
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