733. エリナの帰郷:七日目 リノと再会

 2年前にも訪れたリノさんの家はやっぱり質素な家だ。

 あれからどれくらい成長しているかな?

 聖竜の話だと村の診療を頑張っているみたいだけど。

 ともかく、会って話を聞いてみよう。


「ごめんください。リノさんはいますか?」


「はーい、ちょっとお待ちください」


 聞こえてきたのは明らかにボクたちよりも若い子供の声。

 一体誰だろう?

 親戚の子供とかがいるのかな?


「お待たせしましたー。……ええと、どなたですか?」


「あ、リノさんの友達でエリナと言います」


「私はニーベなのです。リノさんはいるのですか?」


「いますけど、いまポーションの調合をしているんです。少し待っていてください」


「はい、わかりました。でも、勝手に決めて大丈夫ですか?」


「家の前にいる聖竜様がお通しになったのですから悪人じゃないです」


「なるほどなのです」


 ボクたちは女の子に案内されて家のリビングへと通された。

 そこは2年前よりちょっと椅子などが増えている。

 なにかあったんだろうか?


「あ、リノ、お客様だよ!」


「はーい。それじゃ、メグ、今日の授業は終わりね」


「はーい!」


 奥の方からも女の子の声が聞こえてきた。

 どういうことだろう?

 それにリノさんのことをって……。


「……あ、エリナさん、ニーベさん! お久しぶりです!」


「お久しぶりです、リノさん」


「久しぶりなのです。ところで、その子たちは?」


「えっと、私のです」


「弟子!?」


「正確には治癒士見習いと錬金術士見習いですね。この夏の『星霊の儀式』で『職業』が『治癒士』と『錬金士』になったので私のところに修行に来ているんですよ」


 うわぁ、すごいなリノさん。

 もう弟子がいるんだ!

 詳しく聞くとメグという子が『錬金士』で隣村から、ユニという子が『治癒士』でこの村出身らしい。

 リノさんは錬金術も使える治癒術士ということで近隣の村でも有名になっていたそうだ。

 村の備蓄としてのポーションも都合立てていたみたい。

 そんな村々の中で錬金術士系統と治癒術士系統の子供が誕生し、その教育のためリノさんのところに来ていると。

 リノさんも頑張っているんだなぁ。


「それで、いまはなにを教えているのですか?」


「うーん、まだ初歩の段階ですね。メグもユニも【魔力操作】を鍛えてもらっている最中です。どちらも覚えておいて損はないですから」


「覚えておいて損はないというよりもスキルレベル上限まで上げておくのが基本なのですよ」


「そうだ、この本は持っていますか?」


 僕はカバンに入れていた先生の【魔力操作】についての教本を出してみた。

 だけど、リノさんたちは知らなかったみたい。

 そういえば前に来たときもこの本の話はしていなかったっけ。


「この本を知らないのならあげるのです。基礎から応用まで鍛え方が書いてあるのですよ」


「そんな! そんな貴重な本いただけません!」


「コンソールに行けば銀貨数枚で買えるような基礎教本です。無料でというのが気が引けるのでしたらリノさんの作った高品質ポーション1本と引き換えにしましょう」


「そんなものでいいんですか?」


「コンソールではほぼ同額ですよ」


 こうしてリノさんから高品質ポーション1本もらい、【魔力操作】の教本2冊を渡した。

 リノさんは恐縮していたけど、コンソールではほとんど同額なんだよね。

 リノさんの弟子というのも気になるし、もうちょっと話をしてみよう。

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