978. ギルド評議会の場で

 ボスとの交渉があった数日後、定期ギルド評議会が開かれます。

 私はその場にゲストとして参加し、ボスとの交渉結果を伝えることとなりました。

 さて、皆様はどのような反応をするでしょう?


「……ふむ、鍛冶ギルドは市民権と新たな家を見返りに立ち退いてもらうか」


「ボスはその考えのようです。なにか問題でも?」


「いや、その者たちはいままで税金を払わずに暮らしていただろう? 急に税金を取り立て始めて不満は出ないのかと思ってな」


 なるほど、それはありそうです。

 ですが、払うべきものはきちんと払っていただかなくては。


「そこはボスにも頼んでしっかり取り立てていただきましょう。ボスにも取り分を認めれば動いていただけるはずです」


「徴税人制度か。コンソールでは名ばかりの制度になっていたな」


「ですが、まだ廃止されていないのでしょう? それをお使いになってはどうでしょう?」


「わかった。考えておこう、次に服飾ギルドの工場だが、問題はあるか?」


「いえ、ございません。作業も紡織作業が主になりますので、それほど騒音は出ないかと考えております」


「では、ボスにはそのように伝えておきましょう」


 とりあえず、このふたつのギルドについては大丈夫そうですね。

 あとは残りのギルドですが……どうなっているのでしょう?


「申し訳ありません。スヴェイン様は知っているのでしょうが、私はほかのギルドの進捗状況を理解しておりません。次に動けそうなギルドはどこになるのでしょうか?」


「次、か。動けそうなのは……馬車ギルドと木工ギルドか?」


「そうですな。馬車ギルドは動けそうです。完成した馬車の組み立て練習をさせる場としてでしたら新市街にもギルド支部をご用意いたしましょう」


「木工ギルドも大丈夫です。ただ、ギルドとしての歴史の浅さが少々気になります。そこは運用でカバーするしかないでしょうね」


「かしこまりました。用地は確保できているのでしょうか?」


「探している段階ですな。できれば東がいい」


「木工ギルドも東を望みます。正確には北東方面でしょうか。聖獣樹の運び込みに便利な場所がいいですね」


 それぞれ東市街方面が希望のようですね。

 スヴェイン様の錬金術士ギルドと料理ギルドが、建築ギルドが北市街。

 これから立てる予定の鍛冶ギルドと服飾ギルドの工場が西市街。

 宿屋ギルドと冒険者ギルド予定地が南市街。

 そして、馬車ギルドと木工ギルドが東市街ですか。

 これはなかなか順調に分かれてくれました。


 ほかのギルドはそれぞれの事情でまだ新市街支部の建設を躊躇していたり予定が立てられなかったりしている様子です。

 ひとまず、これだけのギルドが新市街に建設される準備が始められるということを手土産にもう一度ボスと面会してきましょう。

 はあ、本当に忙しい。

 スヴェイン様は錬金術士ギルドの仕事をやりながらこんなことまでやっていたのですね。

 さすがにオーバーワークです。

 目が覚めても錬金術士ギルド仕事はなるべくミライに任せるように言いつけましょう。

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