979. 再び裏社会のボスと
ギルド評議会と話を付けた私はもう一度ボスと会うために面会を申請します。
手順は前回会った時に教えていただきました。
子飼いの酒場から回り込むという実に面倒くさいルートを回るのですが、これくらい用心しないといけないということなのでしょう。
「ふうん。ギルド評議会がそんなことをねぇ」
「はい。徴税をあなた方に任せる代わりに徴収した税の一部をお支払いするとのことです。また、新市街東地区に馬車ギルドと木工ギルドの建設予定があるようですね」
「どっちも了解だ。徴税は面倒だが、コンソールの役人が出張ってくるよりマシだろうね。馬車ギルドと木工ギルドは早く開設してもらいたい。場所の目処はついてるのかい?」
「いえ、構想段階のようですね。これから場所を探すようです」
「なるほど。じゃあ、場所探しはあたしらも手伝おうか。どれくらいの人員を募集できる?」
「両ギルドともそれなりの人数ではないでしょうか。馬車ギルドは聖獣樹の加工技術を確立して次の世代に伝えるために新しい人材を募集していますし、木工ギルドは各ギルドから職人が集まったばかりですので人手不足です。新しい人材を獲得できる場は逃がさないでしょう」
「だが、そういったところは働き盛りの連中しか興味がないんじゃないかい?」
その懸念はありますね。
どちらのギルドも技術を蓄積させるという意味ではある程度若い方が望ましいでしょう。
しかし、今回はそうとも限りません。
「いえ、ある程度の年代までなら大丈夫だと聞いてきました。技術の蓄積という意味では効果が薄いのかもしれませんが、それでも技術を伝える意味はあるそうです。それに、あれらのギルドも技術継承だけではなく軽作業や作業補助を必要とする作業を行いますからね」
「そっちのための人材ってわけかい」
「どのギルドも様々な役割があるということです」
「ま、仕事があるならいいだろうよ。ところで、農業ギルドはまだ募集しないのかい? 新市街の連中には元農民のやつらも結構いるんだが」
「農業ギルドはいま行っている技術の蓄積が足りないので、あと1年以上先と聞いています。なにしろ、農業ギルドが行っている農法はスヴェイン様と私が太古の資料から復元した方法で、いまのところ結果は出ていますが大規模農業にするだけの経験と材料が足りません」
「材料か。うちの連中じゃ作れないのかい?」
「不可能でしょう。特定の配分の魔法肥料です。魔術師ギルドが調整に苦労しているため、耕作範囲を広げられないと聞いています」
「……魔力調整か。そりゃお手上げだね。うちには力一杯ぶっ飛ばすやつはいても繊細なコントロールができるやつなんてまずいない。こればっかりはお手上げだね」
「普通の農業で開拓していただいてもいいのですが、村の間で格差ができてしまうのは避けたいのが本音だと考えています」
「ま、同じ街に所属してすぐそばにいるのに片方だけがいい暮らしをできたんじゃ、ろくな感情も湧いてこないか。わかった、そっちは適当になだめておくよ」
「はい。よろしくお願いいたします」
とりあえず、今日の交渉はこれで終わりでしょうか?
心臓に悪いですね、本当に。
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