568.《クリエイト・キングダム》の型紙作り
「それでティショウ様たちは毎日錬金術師ギルド通いですか。大変ですわね」
「まあな。最近、ミストはギルドに残ってもらってもらった資料の抜き出し作業にあたってもらっているが……そっちの進みも悪いようだ」
「私もお手伝いできればいいんですが、厳しかったのでこちらに回されてしまいました……」
「フラビア様はいい加減ティショウ様の後釜になるべきです」
「うう……」
ティショウさんたちの錬金術師ギルド通いも一週間くらいになります。
毎日何冊か資料を持ち帰っていたのですが、ミストさんが抜き出し作業を始めましたか。
そしてフラビアさんは頭脳労働があまり得意ではないと。
やはりティショウさんの後釜になるべきですね。
「それで、アリアの嬢ちゃんはスヴェインのところまで来てなにをしているんだ?」
「学園都市? 国家? ともかくそれの型紙作りです」
「それ、模型ですよね? 魔法で作っていますが」
「はい。これが型紙ですわ」
「模型作りが型紙? どういうことだ、スヴェイン」
「アリアの言うとおりです。それは『クリエイト・キングダム』という魔法の型紙。いわば縮尺図です。それを作らないと魔法が使えないんですよ」
「『クリエイト・キングダム』ですか? 聞いたことがない魔法ですが……」
「当然ですね。僕とアリアが古代遺跡から復元した
「効果は?」
「今アリアが作っている型紙通りの王国が出来上がります」
「……なんつーもんを復元してんだよ、お前ら」
「別のものを復元していた際に見つけた副産物ですよ。それを言い出せば『クリエイト・シティウォール』も『クリエイト・フォートレス』も復元した
「……そういえば聞いたことがありませんでした」
「……スヴェインとアリアの嬢ちゃんだから普通だと考えちまってた」
「それともティショウさんは僕たちがどうやって街を作ると考えていたんですか?」
「……それもそうだ。魔法を使ってとは聞いていたが、どんな魔法かは聞いてねえ」
「そういうわけです。しかもその型紙作り、僕とアリアが揃っていないと作業自体ができないんですよ」
「作業自体ができないんですか?」
「はい。なぜなら……」
「あ!?」
アリアが突然大声を上げたかと思えば、型紙が消え去りました。
ティショウさんとフラビアさんは驚いていますね。
「一体なにが起こった?」
「……私の属性魔力。おそらくは火の属性魔力がゆがみました。また一から作り直しです」
「属性魔力がゆがむ?」
「『クリエイト・キングダム』って全属性、それこそ時空属性も含めてスキルレベル100の術者が揃っていないと型紙すら作れないんですよ。そして、型紙に流し込む魔力がゆがめば今のように型紙がはじけて消え去ります。繊細な技術ですね」
「……まて、恐ろしい言葉が出てきたぞ?」
「全属性レベル100の術者ってどういう意味ですか?」
「言葉通りに意味ですわ。私は基本属性すべてと光と闇がスキルレベル100です。聖と時空は70が上限でしたのでそこまでしか上がっておりません」
「逆に僕は光、闇、聖、回復、時空がレベル100になっています。基本属性も100まで上がるはずですが……そこまで上げられていませんね」
「おい、スヴェイン夫妻。お前らマジものの化け物じゃねえか」
「スキルレベル100ってどうやったら到達するんですか? それも十六歳で……」
「ニーベちゃんとエリナちゃんを育て始めてからはスキルレベルが上昇していません。つまり、十三歳の頃から上がっていませんわ」
「……マジでどうやったらそこまで成長するんだよ?」
「いろいろ無理を通しています」
「はい。聖獣のお世話になったことなど数えられません」
「私が言えた柄じゃないですが、命は粗末にしないでください……」
「これからは……『クリエイト・キングダム』の行使以外で無理はしませんよ」
「そうですね。かわいい弟子ふたりにユイもいますし」
本当にこれから先は自重しなければいけません。
ユイは心配性ですからあまり負担をかけないようにしないと。
「その……俺たち、邪魔か?」
「出直してきますが……」
「その程度ではゆがみません」
「本物の模型はできてますからね。それを『クリエイト・キングダム』の型紙に起こせばいいのですが……それが二週間経ってもうまくいかず」
「本物の模型? 学園国家の模型か?」
「それって見せていただいても?」
「構いませんよね、アリア?」
「早いか遅いかの問題です。お見せいたしましょう」
「では、テーブルの上に広げます」
僕はテーブルの上に学園国家の縮尺図である模型を取り出します。
これを作るのも結構大変だったんですよ……。
「この大きな建物は?」
「学舎です。『クリエイト・キングダム』は王国を造る魔法。王宮に該当する建造物が必要なのでそれを学舎、つまり学校とすることで代用しました」
「規模の大きな学校ですね。こちらの練兵場は?」
「武術系の訓練場にする予定です。ほかに魔法系の訓練施設もここにあります」
「至れり尽くせりだな。こっちの建物は?」
「寄宿舎にしようかと。経営は宿屋ギルドと調理ギルドに任せることになるでしょうが、ひとりで学園国家に渡ってくる方々には便利でしょう」
「本当に至れり尽くせりですね。こっちの小さな訓練施設はなんですか?」
「冒険者ギルドに差し上げます。本部としてお使いください」
「……本気で至れり尽くせりだが、いいのか?」
「大きめの建造物は先にあった方が早いですから」
「そうか、じゃあありがたく借り受ける。ほかにも大きめの建物は各ギルドの建物か?」
「そうしてもらう予定です。街の運営は学園の方で行いますが、各ギルドの本部は先に作りあげます」
「細かいところの増改築は?」
「いくらでも可能です。『クリエイト・シティウォール』みたいな謎物質で竜の攻撃にさえ耐えるような素材ではない……らしいので」
「作った事がなきゃわからねえか。街の中央にある池は?」
「聖獣の泉にします。あと、『クリエイト・キングダム』の範囲外に『クリエイト・シティウォール』で街壁を建てて農耕地帯と聖獣の森も用意します」
「完全に聖獣の遊び場になるな」
「僕が治めようとする限り、最初は必ずそうなりますからね」
少なくとも僕が面倒を見ている限りは聖獣たちの遊び場になり続けるでしょう。
……多分、聖獣農園も隠れて用意しなければいけませんし。
「そんで空白地域は全部建設予定地か?」
「そうなります。最初はがらがらでもゆくゆくはぎっしりにしたいですね」
「そんな悠長なことを言っていると新市街と同じような目に遭うんじゃないのか?」
「アイノアさんたちを引き抜くことが確定しているのでなんとかなるでしょう」
「そうか。稼働はどの程度から始めるんだ?」
「早くても五年後。我が儘を言えば七年から八年先がいいですね」
「具体的でいい計画じゃねえか? 型紙作りとやらもうまくいってないんだろう? どうせならこの模型をギルド評議会に見せて意見をもらったらどうだ?」
「どうしますか、アリア?」
「……申し訳ありません。さすがに百回以上失敗しているためしばらく休みたいです。そうしてくださいますか?」
「わかりました。次のギルド評議会で意見をいただき修正案ができるまでお休みとしましょう」
「はい……疲れましたわ」
「アリアの嬢ちゃんがここまで疲労するとか、相当だな……」
アリアではありませんが僕も神経を使っていますからね。
僕も五属性ですがアリアは五属性の上に型紙作りもですから相当神経をすり減らしているでしょう。
家では少し甘やかしてあげましょうか。
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