569.《クリエイト・キングダム》の模型修正
ティショウさんの提案にあったとおり『クリエイト・キングダム』の模型は次のギルド評議会で意見を募ることとなりました。
各ギルドマスターがその作りの精緻さに驚いていましたが。
「……スヴェイン殿とアリア夫人はこれを魔法で再現しているところなのかね?」
「そうなります。それができないといつまで経っても箱が用意できないので」
「しかし、規模の大きな街ですね。コンソールの第一街壁内どころか第二街壁内クラスまであるのでは?」
「せっかくのご厚意に甘えて規模を拡大しましたから。第二街壁までは広くないですが第一街壁以上の広さはあります」
「なるほど……各ギルドの本部もこの時点から用意されているのはありがたいな」
「増改築も多分できるはずなので使いにくかったらどんどんリフォームしてください。間取り的にはスペースもあります」
「助かります。それで、今日決めたいことは?」
「そうですね。街の大まかな修正案がないかと建築ギルドに模型の空白部分の街作りを考えてほしいところでしょうか」
「そうか。錬金術師ギルドマスター、この空白部分は建築ギルドが好き勝手に建物を建てていいのか?」
「先に街作り案をくださいね? あまり複雑な街並みとかだと困りますから」
「そんなことするか! 新市街みたいに急遽作る必要もなく、まっさらな土地に望むがままの街が建てられる! 建築ギルドの腕の見せ所じゃねえか!!」
「ちゃんと宿屋ギルドとか商業ギルド、調理ギルドに製菓ギルドとかにも確認を取ってくださいね。あと、土地をすべて使い切らないでくださいね?」
「わーってるよ! それで、いつから着工できる! 来月か!? 夏か!?」
「うーん、文献通りなら『クリエイト・キングダム』の魔法が完了するまでに最短六ヶ月、最長一年あまりらしいんですよ。だから、急ぐ必要はありません。各ギルドと調整して綿密な計画を」
「わかった!」
本当に大丈夫でしょうか、建築ギルドマスターは。
住宅街とか商業施設を建てていただきたかったのですが……。
「錬金術師ギルドマスター、質問だ。その大きな建物の中に宿泊施設や食事施設、小売業者のスペースはあるのかね?」
「……しまった。宿泊施設はありますし、食事施設はその一階を開放していただければいいと考えていましたが、小売業者、商会などの入るスペースはありませんね」
「では、その分の余白は空けるべきだな。模型の上半分は学生向け施設にする予定なのだろうが、学生とて様々な商品を購入するはずだ」
「わかりました。では大通りに面したこの建物を、こちら側に移動して……」
僕は学生街中心部にいくつかのスペースを空け、大規模商業施設を建てられる土地を開放しました。
「さて、ほかに要望はありますでしょうか?」
「各ギルド本部はございましたな。支部は?」
「支部は……設けるつもりは今のところありません。各ギルド本部がそもそもかなり大きめで作っていますし、支部を作らねばいけないほどこの国に人が残るのか疑問です」
「そうか? この国に残り続ければ研究職じゃなくても最新式の技術に触れる機会は多いんだろう? 残りたがるやつは出てくるはずだぜ」
「なるほど……そこまで考えが及びませんでした。支部もこの際ですから用意してしまいますか」
僕は各ギルド本部の対面になるように同じ規模の建物を並べていきました。
これが各ギルド支部ですね。
「スヴェイン、空白部分に作る宿屋は一般客向けの宿屋か?」
「そうなってしまいますかね。どうしても最初に建てる宿屋は巨大建築物になりますから」
「わかった。そこも考慮して話し合う」
「お願いします」
うーん、あと直さなくちゃいけないところはなんでしょうか?
「スヴェイン、こっちの小っこい施設はなんだ?」
「職業体験施設ですね。その隣が、各ギルドの英才教育施設群になります」
「住宅街の近くにあった方が便利じゃねえのか?」
「ふむ……建築ギルドマスター?」
「確かに、ガキどもが通うならそっちの方がいいだろう。今なら大通りの一等地を使いたい放題だ。占有しちまえ」
「では、そのように」
各種職業体験と英才教育施設群は大通りに面した住宅地側へと移動。
いや、これだけでも改善点が出てくる出てくる。
「ほかに要望はありますか? なんでも構いません」
「それでは。医療ギルドの建物を平面で広く。また街の各地に診療所を建てられないかね?」
「なるほど。患者を運び下ろしする必要性を減らし、各地で軽い症状なら取り扱ってしまいたいと」
「うむ。コンソールではそれがかなわず歯がゆい思いをしている。学園国家ならまっさらな状況からスタートだ。そういった土地も確保できるだろう」
「できますね。診療所の規模は……患者六人程度を留め置ける程度を見積もればよろしいでしょうか?」
「十分だ。可能かね」
「街の中各所に。構いませんよね、建築ギルドマスター」
「おう。それも含めて街に仕立てる」
「では……医療ギルドを平面で広くして、診療所は街のこのあたりにこれだけの数を配置と」
「ふむ。いい感じに配備されているな」
「これなら住宅街のどこからでもアクセスしやすいでしょう」
「助かる」
「ほかに要望のあるギルドは?」
この問いかけに対し次に手を上げたのは……服飾ギルドですね。
「スヴェイン殿。服飾ギルドの規模が非常に大きいですがそれだけの素材、集まるのでしょうか?」
「ああ、初期は僕の奥の手を使います。薬草栽培と同じ方法ですね。あと、コットン・ラビットと虹色羊も呼び込むので低級魔法布素材には困らないでしょう」
「霊木織機は?」
「そちらも僕の方で。この前、僕の拠点で試しに聖獣樹の織機を作ってみたんですが一瞬でできました。稼働し始めたら大量に霊木織機と霊木糸車を持ち込みます」
「うらやましいですね」
「僕の造る国家ですから出し惜しみなしです、少なくとも初期投資は」
「聖獣鉱脈は?」
「作ろうとしなくても勝手にできます」
「……ですよね」
「難点があるとすれば、山肌と国との間に聖獣の森が広がっていることですが……輸送も聖獣側にお願いすれば問題ないでしょう。彼らも大量のハズレを貯め込むよりはマシだと考えてくれるので」
「ほかに質問のあるものは?」
医療ギルドマスターの問いかけに挙手したのは魔術師ギルドマスター。
さて今度はなんでしょう。
「錬金術師ギルドマスター。ギルドの数に対してギルド本部の数が多い気がするのだが」
「……ああ、そう言われてみればそんな気がするねえ」
「確かに。盲点でしたな」
「ああ、それですか。将来的にはいくつかのギルドを立ち上げるつもりなので先行投資です。具体的には〝魔導具ギルド〟、〝魔宝石ギルド〟、〝付与魔法〟ギルドの三つは確定ですね。それ以上増えたら……学舎内にでも本部を取り込むか、増築です」
「魔宝石っつーとあれか? お前と最初に会ったときの指輪とか、俺の装備にはまっている宝石」
「ええ。その方面の安全な使い道を研究していただきます。僕が使うと物騒なもの優先なので。『宝石付与』もここの一部ですね」
「〝魔導具ギルド〟は見当がつく。魔術師ギルドから魔導具部隊を独立させたものだろうからな。〝付与魔法〟ギルドとは?」
「その名前の通り、付与魔法を研究します。そろそろ、皆さんの『コンソールブランド』では打ち止めが近いギルドも出てきているはずなので」
その発言、一気に評議会場が騒然となりましたね。
まあ仕方がありませんか、『コンソールブランド』の発展限界が近いと言われたのですから。
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