921. 邪竜族の思惑

 カイザーに話してから数日、さらに邪竜族の巣のあとは見つかりました。

 それらも焼き払いましたが、やはり罠つきです。

 本当に奇妙な仕掛けを施して巣を残していっていますね。

 真の狙いはなんなのでしょうか?


『それを我に聞きに来たのか?』


「カイザーでもだめだったんですよ。同格のあなたならわかるかもしれません。よろしくお願いします、『パンツァー』」


『まあ、話は聞くが……念話で聞いている限り、我にも心当たりがないぞ』


 やっぱりそうですか。

 どうしても落ち込んでしまいます。

 なにか手がかりはないものか。


『しかし、その罠についてなら似たような効果を持つ物を知っている』


「本当ですか! 『パンツァー』!」


『竜族の前線基地だ。いざという時、そこから竜族が飛び出せる仕組みになっている』


 竜族の前線基地……なるほど、ありえそうな話です。


「ありがとうございます、『パンツァー』」


『気にするな。的外れな意見の可能性もあるからな』


「それでもです。なにもわからないよりは、少しでも指標があった方がわかりやすいというもの。助かりました」


『ならば行け。ほかの巣も片付けよ』


「はい。失礼します」


 僕は巣を探す聖竜たちの数をさらに増やし、対応に当たらせます。

 すると、巣のあとがうじゃうじゃと発見されることなんの。

 見つけ次第、焼き払ってもらっていますが、ここに来て発見のペースが短くなってきましたね。

 少々困った状況が近づきつつある、というところでしょうか。


 僕も最初に焼き払った巣に赴き、魔力の痕跡を調べ直します。

 すると、微弱ながら転移系の魔力の痕跡が発見できました。

 これは『パンツァー』の言っていたことで当たりでしょうか。


 そのあとも数日間、巣を焼き払っていたのですが、とうとう最悪の報せが届きました。


『帝! 巣から大量の邪竜族が湧き出してきました! ご指示を!』


「撤退です! 数から言っても勝てません! 陣形が組めるところまで退避なさい!」


『承知しました!』


 ついに来ましたか。

 いよいよ邪竜族との戦闘開始ですね。


 カイザーには最終防衛戦として残っていてもらわないといけない以上動かせませんが、ほかの竜たちでなんとかしましょう。

 相手は動き回るだけで大地を汚染する相手、出現した時点で討ち取りたいものですが、さすがに数が多すぎます。

 万全の体制であたらせてもらいましょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る