920. その後の経過

 邪竜たちの巣を焼き払ってから1週間が経過しました。

 その後も邪竜たちの巣の残骸と思われる場所がいくつか発見されており、焼き払おうとすると同じような罠が発動することがわかっています。

 ただ、罠を解除したあとはなにも残らず、ただ、汚染されたあとの残る大地があるだけ。

 不気味なこと、この上ありません。


「カイザー、本当に心当たりはないんですね?」


『すまないが、まったく心当たりがない。邪竜どもがそのような面倒な振る舞いをすること自体おかしなことなのだ』


「なるほど。それもそうですね」


 邪竜族は決して知能の高い種族とは言えません。

 それ以上に強靱な肉体に再生能力、なによりも周囲を不蝕させることのできるその力によって力押しの戦法を好みます。

 それなのに、今回のようなまるで罠をはって待ち伏せする方法は、種族の性質に合わないもの。

 邪竜族の中でなにかが起こっているのでしょうか?


『スヴェイン、その巣の残骸が見つかった場所はなにか規則性があるのか?』


「その可能性ですか。僕も考えましたがまったくわかりません。最初に潰したものが最後だとして、それ以外の順番がわかりませんし、それ以上に特定の記号にも文字にも形にもならないんですよ」


『ふむ。私にもその残骸があった場所の地図をあったら見せてもらえるか?』


「持ち歩いていますよ。これです」


 僕はカイザーの目の前に残骸があった場所を記した地図を出しました。

 地図には残骸を発見した順番も書かれています。


 ですが、その地図を見てカイザーが出した結論も「わからない」でした。


『いや、意味がわからないな。一直線に伸びているわけでもなく、円や多角形になっているわけでもない。これに意味を見いだすのは不可能だ』


「念のために僕が地上で調べた場所もあるんですが、なんの形跡もありませんでした。確かに汚染の影響がわずかばかり残ってはいましたが、それだけです」


『聖竜といえど、一度汚染された場所を完全に浄化するのは難しいからな。ほぼ浄化できても残りわずかな部分は自然の浄化作用に任せるしかない』


「そうなりますね。……とまあ、現在の経過はこんなところです。なお、聖竜の里には邪竜の気配がありませんでした」


『分断しての同時侵攻という線も薄いか。なにを考えているのか読めないな』


「もっとわかりやすい種族だと思っていたのですがね、邪竜って」


『同感だ』


 僕は溜息をつき、目の前の地図に視線を落とします。

 どこからどう見ても意味のなさそうな巣の痕跡。

 あえて言うなら、すべて人の手が入らないような場所に作られており、地上からは発見しづらいことでしょうか。

 うーん、よくわかりませんね。

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