1022. 医療ギルドの状況は

 今日は医療ギルドに納品へと行くついでに医療ギルドの状況を探ることにしました。

 普段は納品も僕ではなく、他の者が行っているのですがたまにはいいでしょう。

 茶飲み話は一番落ち着ける錬金術士ギルドでするのが慣例となっていましたが、医療ギルドでも少しはお茶を飲ませてもらいたいです。


「ああ!? スヴェイン様!? なぜ医療ギルドに!?」


「ポーションの納品ついでにジェラルドさんとお話をと。いま時間があるでしょうか?」


「ギルドマスターですね。ちょっと話を聞いて参ります」


 ふむ、受付の方を相当驚かせてしまいましたか。

 いや、ギルド評議会のギルドマスターがひょっこり顔を出せば大抵は驚きますか。

 ……ですが、うちの受付が驚いたり慌てたりしたという話は聞きませんね?

 慣れたのか、肝が据わっているのか、どちらでしょう?


「スヴェイン様。ギルドマスターはただいま回診の時間でした。少しお待ちいただくことはできますでしょうか?」


「ええ、構いません。僕も面会予約なしできているのですから、待たされることなんて気にしませんよ」


「それでは応接室にお通しいたします」


 案内されたのは医療ギルドの応接室。

 医療ギルドらしからぬ、落ち着いた雰囲気の部屋です。

 医療ギルドはどこかしら戦場めいた空気を醸し出しているのですが、この部屋だけは一般的な空間ですね。

 さすがに、お客まで緊張させないためでしょうか。

 それでは、ゆっくりと待たせていただきましょう。


「おお、スヴェイン殿。急にやってくるとは、急ぎの用件……ではなさそうだな」


 30分ほど待っていると、ジェラルドさんがやってきました。

 僕の様子を見て特に特別なことが起きたわけでないことは察知してくれたようです。

 実際、面倒ごとが起きたときは刃傷沙汰や強盗、窃盗などの場合はティショウさんが、詐欺や取引の食い違いなどは商業ギルドマスターが第一の相談役です。

 最終的な取りまとめ役として議長のジェラルドさんにも話が行きますが、だいたい解決したあとですね。


「特に急ぎの用件があるわけではありません。実は、今年の新規入門者募集の願書を錬金術士ギルドではもう受付はじめているのですが、例年の数倍となっており……。医療ギルドの方はそういう兆しがないのかなと伺った次第でして」


「医療ギルドの志望者か。儂は担当ではないが、担当者からは増えていると聞いたことがあるな。新市街の住人で医療に心得のある者が入門を希望しているらしい。我らとしても、ある程度の知識と経験があるならば、再教育をして新市街の診療所建設に力を注ぎたいところだ」


 やはり、こちらでも増加傾向ですか。

 いままで日々の暮らしで精一杯だった新市街の住人に余裕が生まれはじめ、ギルドを目指すようになったということでしょう。

 それはいいことですね。


「夏には鍛冶ギルドと服飾ギルドの新工房も新市街に完成する予定だ。あちらも大量に採用する予定のようだからな。新市街にも活力が生まれはじめてきていいことだ」


「確かに。このままの勢いを維持していきたいですね」


「うむ。それはそれとして、ひとつ提案があるのだが」


「提案、ですか?」


「新市街から魔術師ギルドに入門することはできぬだろう。あそこは入る時点で高度な知識と技術を要求されるエリート集団だ。それを解消するべく、新市街でギルド評議会運営の私塾を開校してみようと思うのだがどうかね?」


 私塾、ですか。

 どうしたものですかね。

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