それぞれの新規入門準備
1021. 夏に向け、新規ギルド入門者の受け入れ準備
さて、トラージュとかいう愚か者のせいで、二週間近くを無駄に過ごしてしまいました。
それ自体はまあかまわないのですが、事務仕事が遅れたのは事実です。
急ぎで片付けねばならないのは……これですか。
「ギルドの新規入門希望者ですね」
「はい。今年は新年が始まってすぐより募集を開始しました」
「……まだ、二週間しか経っていないのにこれですか、ミライさん」
「これですね。今年は英才教育機関を作ったのでなおさら多いようです。どうしましょう?」
「どうするもこうするも、一次試験は実技試験ですからやることは変わりません。難易度を上げれば英才教育機関の生徒が有利になるだけですし、これまで通りにやるだけです」
本来、僕やミライさんは新規入門者の選抜から外れています。
それなのに、僕たちに希望者の資料が回ってきたということは、ちょっとやそっとじゃなく困る未来が見えているのでしょう。
あくまで手は貸さない方針ですけど。
「試験監督として第二位錬金術士の中でも先輩の方々も導入するなど、なんとか手を増やすしかないでしょう」
「そうなりますよね。試験内容は一律でしょうか?」
「一律、通常品質のポーション作りです。これは事前に掲示板などでも通達し、試験を受ける順番で有利不利が出ないようにします。これは確定事項です」
「ですよね。……それにしても、今年は本当に多いですね」
「出身地を見る限りだと、現住所が新市街の者たちが増えています。新市街のギルド支部を作った結果、自分たちでもポーションを作れるという自信がついたのでしょう」
「なるほど。それで今度は本部への階段を上ろうと」
「はい。悪いことではないです。ないのですが、この人数はちょっと想定外でしたね」
本当に想定外でした。
ある程度は増えると考えていましたが、山のように増えるとまでは想像していなかったのです。
こればっかりはどうにもならないですね。
「でも、どうしましょう? この人たち、落ちたら旧市街支部に行くことを了承してくれるでしょうか?」
「旧市街支部でも腐らず真面目にやってくれるのでしたら歓迎しますよ。やはり、旧市街支部でも稼ぎは新市街支部より多いですから。ついでに、腐った空気を浄化してくれるなら嬉しいですね」
「では、一次試験の合格基準を満たし、面接で落ちた者は旧市街支部の状況を教えた上でそちらに所属するかを考えてもらうということで」
「はい。それに、旧市街支部に所属すると、コンソールの市民権もついてくるんですよ。今年以降は税金を納める必要も出てきますが、衛兵なども真面目に取り合ってくれます。悪いことばかりではないはずです」
新市街支部は職員こそコンソール市民権を持っています。
ただ、彼らは本部からの出向職員なんですよね。
持ち込みの錬金術師たちは、あくまでも持ち込みをしているだけでギルド員という扱いは受けていません。
あまり多くない稼ぎを税金に取られないための措置でもありますが、新市街から旧市街に移ってくるのでしたら、納税はきちんとしていただきましょう。
どれくらいの錬金術士が渡ってくるのか、興味がありますね。
今年の選考状況はハービーから詳しく教えてもらいましょう。
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