1020. トラージュの処分
トラージュを捕まえて一週間が過ぎました。
あの男はさすがに裏社会によって殺されることは恐ろしいらしく、ギルド評議会による懲罰を受け入れることになります。
重犯罪者の焼き印も普段なら顔だけなんですが、彼の場合はそれすら隠す可能性があるため全身に入れさせてもらいました。
散々ギルド評議会を舐めてくれた結果と思って受け入れてもらいましょう。
「それで、スヴェイン殿。あの男はもう搬送されたのか?」
一仕事終えた錬金術士ギルドでのお茶会。
そこでジェラルドさんが、不意に尋ねてきました。
ジェラルドさんはいつ搬送されるかまでは知らなかったようですね。
「昨日鉱山に向けて出発しました。特製の魔法檻の中で魔力封じの枷をつけていますので脱走は不可能でしょう。なんなら、裏社会の方からも警告が行くと聞いてますし」
「裏社会からの警告?」
「今晩、夜襲を仕掛けるそうです。警備兵には一切気付かれず、トラージュだけ軽く傷つけて警告をして帰るだけだと聞いています」
「暴走することはないのかね?」
「ボスの直下の腕利きが行くと聞きました。失敗はないでしょう」
本当に、あの男ひとりのために各陣営の貴重なリソースを割きすぎています。
ですが、彼はそれだけどの陣営にも泥をかけましたし、面子を潰さないためにも相応の罰が必要なのです。
裏社会からは『いつでも殺せる』というメッセージですね。
「それにしても、あのような男が現れるとは。今後はどのような対策を練ればよい?」
「招待客以外の参加者は断るのが一番でしょうね。招待客以外で連れとして参加する場合、招待客が全責任を負うということで」
「なるほど。つまり、入り口までは通すしかないのか」
「確認したところ、あの男もコンソールに入るときは普通の冒険者として入ってきていたようです。正直、冒険者は冒険者証が身分証になっているので、それを理由に止めることはできません」
「入るときの言動がおかしければつまみ出せるが、一般人が一般人として入国するのはどうにもならぬか」
「なりませんね」
まったく、本当にあの手の連中はどうにかしてほしいです。
裏社会のボスにも話を聞いてきましたが、あの手の表とも裏ともつかない者には手を出しにくいということでした。
つまり、僕たちにとっても裏社会にとっても厄介者だったということです。
ああいった連中が現れるのも平和になってきたということなのでしょうが、それを逆手にとって好き放題されても困ります。
本当にどうにかならないものですかね。
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