1019. トラージュの最終処置

「これであなたには道がなくなりました。僕たちに捕まって断罪されるか、僕たちが釈放して裏社会に断罪されるかのどちらかです」


 こういってはなんですが、裏社会からの手紙が重い処分を課すきっかけになりました。

 あちらとしても、このような小悪党に僕たちがいつまでも振り回されているのは困るのでしょう。


「お、お前たちからの処分を受けるとどうなる?」


「重犯罪者の焼き印を押された上での人里離れた地にある鉱山送りです。ちなみに、終身刑になります」


「そ、そんなの受け入れられるか! すぐに釈放しろ!」


「いいんですか? 僕たちが釈放すれば裏社会があなたに制裁を加えるだけです。どの程度の制裁になるかは知りませんが、あちらも生かしておく義理はないでしょう」


「あんたたちが守ってくれるんじゃないのか!?」


「こちらとしては、重罪人を見逃すだけでも十分配慮してるんですよ。コンソール市民であれば守る必要も生まれるでしょうが、あなたはどこの身分証持たない経歴不詳の一般人だ。そんな人と付き合うほどギルド評議会は暇じゃない」


「み、身分証ならあるぞ! 冒険者ギルドの……」


「そいつなら、とっくに失効してるぜ」


 さすがはティショウさん。

 冒険者ギルドマスターだけあって冒険者の登録状況を調べるのはお手のものですね。


「な、なんだと?」


「これだけの重罪を犯したんだ。冒険者ギルドのギルド員資格なんて剥奪されているに決まってるだろうが。ああ、冒険者ギルドに問い合わせしてくれ、ってのは無駄だぞ。俺が冒険者ギルドのギルドマスターだ」


「じゃ、じゃあ、僕の身分は……」


「さっきも言ったでしょう。経歴不詳の一般人だって」


「そ、それならコンソールの市民になる! これでどうだ!」


「不可能です。コンソール市民になるには、コンソールにあるギルド評議会下のいずれかのギルドに所属する、またはコンソールに3年住んでその間税金を支払い続けるのが条件です。僕が来る前から決まっていたルールなので僕も変えることができませんし、変えるつもりもありません」


「じゃ、じゃあ、僕が助かる道は……」


「もうないんですよ。あなたが脱獄囚になった時点で。闇商人からポーションを強奪するなんてことをしなければ、ギルド評議会から逃げおおせる道もあったかもしれません。ですが、あなたはポーションを奪うことでコンソールの裏社会も敵に回しました。表と裏、両方から追われている身のあなたはどうあがいても暗い末路しかなかったわけです」


「そ、そんな。僕の明るい未来。リッタール大使としての華々しい活躍……」


「勘違いしないでください。リッタールはすでに国ではなく村です。あなたは大使のつもりだったようですが、他国からすればただの詐欺師にしかすぎません。あなたの描く理想の姿など絶対に手に入らないものだったんですよ」


 ここまで言うと、トラージュは力なく崩れ落ちました。

 自分の将来が断たれたことに対する後悔か、それとも自分が大使になれなかった後悔か。

 ともかく、この男は僕たちが処分で問題なさそうですね。

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