789. 錬金術師ギルドの技術指導 6
ゾイブライガー公国での出張講義2日目。
昨日、追加で受講したい者がいないかを確認してもらっておいたので人数が増えるのは今日が最後でしょう。
さて、どの程度人数が増えているでしょうか?
公都に到着したらそのまま迎えの馬車に乗り錬金術士ギルドへ。
錬金術師ギルドに着いてからあちらのギルドマスターと面会するとどうも表情が曇り気味です。
なにかあったのでしょうか?
「申し訳ありません、スヴェイン殿。本日の講義ですが、中止してほしく……」
「ふむ。なにかありましたか?」
「その、私どものギルドで教育担当をしている講師が、あなた方の指導を批判していて受け入れられないと。もし、今日以降も講義を続けるのならギルドを辞めて出ていくと言っておりまして」
なるほど。
ギルドの教育担当者が僕たちの指導を拒んでいると。
まあ、気持ちもわかります。
この国のやり方とはまるで異なりますからね。
ですが、他国のやり方も自分たちと異なるならば取り込み、悪いところは改善しいいところはそのまま利用すればいいだけのことです。
講義そのものを拒否させる理由にはなりませんね。
仕方がありません、強硬手段と参りましょう。
「わかりました。その教育担当者とやらのところに案内してください。彼の技量がどれだけなのか判断してみましょう」
「いや、しかし……」
「技術職なら技術でわかり合うのも大切ですよ。案内していただけますね?」
「……わかりました。いま、彼は昨日スヴェイン殿たちが講義したギルド員たちの指導にあたっています。それでもよろしければどうぞ」
「構いません。行きましょうか」
僕はゾイブライガー公国の錬金術士ギルドマスターを急かしながらその教育担当者の元へと案内してもらいます。
僕が連れてきた第三位錬金術師たちには待っていてもらおうと考えていたのですが、彼らがついてきたいと申し出てきたため一緒に来てもらうことにしました。
あまりぞろぞろと行くものでもないと思うのですが。
ゾイブライガー公国の錬金術士ギルドマスターに案内されたのは錬金術士ギルド内の昨日と同じ部屋。
ドアの外からも男の金切り声が聞こえてきます。
話し合いになるのでしょうか?
とりあえずドアをノックして入室してみるとしましょう。
「誰だ!」
「おや、失礼。しかし、名乗る暇も与えないのはどうかと思いますよ?」
「何者だ、小僧! この錬金術士ギルドは貴様のような……」
「僕はコンソール錬金術士ギルド、ギルドマスターのスヴェイン。一応、コンソールギルド評議会の末席に名を連ねている者です」
「貴様か! こいつらに余計なことを教えたのは!」
「はて、余計なこととは?」
「しらばっくれるな! なにかを作ったあとすぐに鑑定するように教えたのはなぜだ! ポーションの検品は……」
「ポーションの検品は検品係でも行うべきことでしょう。それ以前に作り手が自分の作ったものの品質を知らないのは大問題です」
「なんだと?」
「当然でしょう? なにを作るにしても最初に手に取るのは作製者自身です。その作製者が自分の作品の出来映えを知らないことが許されるとでも?」
「そんなもの、コンソールの基準だろうが! ゾイブライガーにはゾイブライガーの……」
「そもそも素材の品質がわからないのでは良質な作品は作れませんよ?」
「チッ! 舌の回るガキだ!」
「……ほう、僕がコンソール錬金術士ギルドのギルドマスターだとは名乗りましたよね?それ以上にコンソールギルド評議会の一員だということはコンソールの最高権威につばを吐く行為、僕としては見過ごしてもいいのですがさすがにここまでされては帰って報告しないわけにもいきませんね」
「な!? それはお待ちください! こんなことが公王様の耳に入れば……」
慌ててゾイブライガー公国の錬金術士ギルドマスターが割って入ってきますが少々遅い。
自分の部下が人を小馬鹿にした態度を取りすぎです。
「最悪取引停止でしょう。僕の知ったことではありません」
「それだけはお許しを……」
「……ふむ、ではこうしましょう。僕と……では相手にならないので、僕が連れてきた誰かと錬金術の腕前で勝負していただきましょう。あなたが勝てばおとがめなし。僕たちも大人しく帰ります。僕たちの連れてきた者が勝った場合、あなたはこのギルドから去りなさい」
僕のこの宣言に柄の悪い教育係は乗ってきました。
さて、誰に相手をしてもらいましょうか?
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