972. もう一方の楔
ギルド支部建設による雇用改善は一歩ずつですが進み始めています。
そうなると、もうひとつの問題は治安の問題。
やはり、旧市街に比べ新市街の方が犯罪件数は多いのです。
衛兵の数も増やしてはいますが増えすぎた人口に対し、抑止力が追いついていません。
なにが言いたいかというと、もっと簡単で直接的な抑止力を送り込めばいいのです。
つまり、聖獣たちにも本格的に新市街へ進出してもらいます。
「ギルドマスター、新市街にも聖獣たちを配置するってどうやるんですか?」
「手っ取り早く聖獣の泉を配置して回ります。水質浄化にもなりますし、子どもの遊び場にもなります。子どもたちが寄りつけばそれを目当てとした聖獣たちも寄ってきます。それが一番早いです」
「そんな簡単にいきますかねえ?」
「まあ、見ていてください」
ミライさん経由で新市街の空き地を何カ所か買い取ってもらい、アリアと一緒にさくさく聖獣の泉として機能するように浄化していきます。
聖獣たちも新しい泉は待ちかねていたようで、すぐに寄ってきては水質を整えたり果物の木を植えたりと好き放題整備を始めます。
この辺りはいい加減限度をわきまえてくれているでしょう。
「うーん。聖獣たちって本当に気が早いです」
「コンソールは彼らの遊び場と化してますからね。竜災害の時は相性も悪かったので前面には出ていませんでしたが、本来は役に立ちたかったのでしょう」
「……そういえば、あの時って戦っていたのは聖竜たちで聖獣が戦っていたとは聞きませんね?」
「邪竜の群れが相手だとどうしても力の強い聖獣しか前面に出られないんですよ。竜への攻撃と浄化を一度にするのはかなり大変ですし、今回は聖竜たちが前線を支えていたので聖獣はいざという時の備えで残っていたようです」
「確かに」
「まあ、向き不向きですよ」
ここも本当に向き不向きなんですよね。
聖獣は人の街に入れるサイズの者でしたら人と暮らすことに困りません。
ですが、竜は基本的に巨大なので人の街に入ることは容易ではないです。
同時に体の大きさが攻撃力や力の強弱を決めるわけではないと言えど、やはり巨大な相手を敵にしての防衛戦は小型の聖獣だときついものがあります。
そこを考えての布陣だったわけです。
なんでも聖獣任せ、竜任せにはできないわけですね。
「さて、聖獣の泉は設置し終わりました。数日後に様子を見に来てみましょう」
「わかりました。でも、本当に上手く行くのかなあ?」
疑い深いですね、ミライさんは。
そこのところはわかっていますよ聖獣も。
数日後様子を見に来てみると、予想通り聖獣と子どもたちが楽しく遊んでいました。
周囲の様子も見て歩きましたが、前に比べて聖獣たちの姿を見かけます。
おおよそ計画通りですね。
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