971. 西区画の買い取り状況

 服飾ギルドの紡織部門と鍛冶ギルドは西区画を選びましたか。

 いまの西区画はどのような状況になっているのでしょう?

 ちょっとボスに依頼して案内人を出してもらい視察です。


「ふむ。これはまた、住宅街ですね」


「だね。西区画はほかの区画に比べて狭い代わりに、聖獣がよく行き来してたから、昔も治安がよかったんだ。それで住宅地になったんだよ」


「聖獣たちが……ああ、聖獣の泉に」


「ひとっ風呂浴びに行くついでに威嚇していったみたいだね。裏社会の連中には怖いが、そっちと関係ない人間にとっちゃ特になんの関係もない話だ」


「なんとも聖獣たちらしい。しかし、これだけ住宅が建ち並んでいると新しく工場を建てるのも難しいですか」


「服飾ギルドの下請けをする糸作りの工場と鍛冶ギルドの下請けの鉄工所だっけ? それでも人が集まるなら、どこか別の場所を用意して区画を空けさせるようママと相談するよ?」


「うーん、あまり新市街の住人とはもめごとを起こしたくないんですけどね」


 新市街に働き口を作るのに新市街の人間が集まらないのでは意味がありません。

 そういう意味でも、あまり波風立たない方法で建てていきたいのですが。


「第二街門の外は?」


「街門が閉まる前にギルドの作業をすべて終わらせなければいけなくなるので、ちょっと厳しいですかね」


「ああ。新市街と旧市街を結ぶ第一街門はそれなりの時間まで開いてるけど、第二街門はすぐ閉まるからね」


「はい。その外側に第三街門があるとはいえ、警備兵があまりいない第二街門より外には一般市民を置きたくありません」


「立派だね、コンソールの怪童の考えは。よし、ママとも話してうまいこと話を進めてあげるわ」


「大丈夫なんですか? 力尽くの立ち退きはご遠慮願いたいのですが」


「元々この地区は私たちの支配地域でもあったから顔が広いのよ。ちょっと別の建物を建ててもらうことになるかもしれないけれど、うまいことまとめ上げてみせるわ」


「では、ひとまずお願いします。その場に僕も顔を出した方がいいでしょうか?」


「最初はこない方がいいわね。いくらよくしてくれているとはいえ、あなたはギルド評議会の一員なんだから」


 やっぱり、新市街でギルド評議会の評判はそこまでよいものではありませんか。

 最初の話し合いはボスたちに任せてあとからまとまった話を聞いてみましょう。

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