169.冒険者ギルドの講師到着
ライウから連絡を受けたとおり三日後、シュミットまでカイザーに乗って飛んでいき、講師を乗せてまた戻ってきました。
……これ、シュミット公国でもロック鳥あたりと契約してもらわなければいけないのでしょうか?
「……サンダーバードを従えているとは聞いてたが」
「見たことのない聖獣ばかりですわ」
講師たちを出迎えるためにコンソールの外までやってきていたティショウさんとミストさん。
ふたりが講師の方々を乗せてきた聖獣を見て溜息をこぼしています。
「紹介しますか?」
「いや、聖獣の紹介はいい。頭がパンクしそうだ」
「スヴェイン様と敵対してはいけないとあらためて思い知っただけですわ」
「そうですか」
いつものことながら酷い言われようです。
さて、このあとはどうすればいいのでしょう?
「ご苦労様です。ユージン、ドワイト、リンジー、エリシャ」
どうやらあとはシャルが引き継いでくれるようです。
お任せしましょう。
「気にしていません。シャルロット様。それ以上に竜の背に乗るという貴重な体験をさせていただき感謝しています」
「そうだな。それも
「しかし、スヴェイン様がいるからこその交流ですね。代替手段を今のうちに考えておかないと」
「そうですね。毎回お兄様にお願いするのも問題ですし、シュミット公国としてロック鳥と契約できるものがいないか探しましょう。そうすれば、少なくともカイザーの手は借りずにすみます」
「それがよろしいかと。あとは連絡手段もでしょうか」
「ああ、そちらもですね。お兄様頼りのところはすべて見直さなければいけません」
うんうん、何事も自分たちでできるように努力するのは素晴らしいです。
その精神を忘れない限り、聖獣たちも必ず応えてくれるはずですよ。
「うらやましいなぁ。あの考え方」
「ですわね。何事も自助努力を忘れないというのは基本ですのに……」
「その基本を忘れなければ大丈夫ですよ」
「その根本をこれから叩き込んでもらわなくちゃなんねぇのだがな」
そういえばそうでした。
単純に技能を鍛えるだけではなく、考え方も変えなくちゃいけないんですよね。
大変な任務です。
「それで、そちらがこの街の冒険者ギルドマスターか?」
「ああ。俺がギルドマスターのティショウ」
「私がサブマスターのミストです」
「私は今回の講師陣のまとめ役、特殊技能講師のエリシャだ。よろしく頼む」
「よろしく頼む。ここで立ち話もなんだ。馬車を用意してある。冒険者ギルドで細かい話を詰めよう」
「わかった。シャルロット様、それでは行って参ります」
「今回は私やお兄様も同席いたします。今後に備えて不備がないかも確認しなければ」
「かしこまりました」
「スヴェインたちは馬車に乗ってくか?」
「昨日から正式に街の中を聖獣たちで移動してもいいと許可が出たのでそちらにします。飛行しないことが条件ですが」
「わかった。さすがに空を飛ばれたら驚くからな」
「シュミットでは当たり前すぎて忘れてましたが普通は空を飛ぶと驚きますよね……」
「俺たちもシュミットの生活が長いからなぁ……」
「シュミット公国でも聖獣様たちが住み始められたのは三年ほど前なのに、当たり前になりすぎてたわね……」
「公太女様、シュミットって魔境か?」
「機会があったらお兄様にお願いしてシュミット公国にも遊びに来てください」
「覚悟が決まったらそうするよ」
それぞれ馬車や聖獣に乗り込み場所を冒険者ギルドへ移します。
冒険者ギルドに入るとティショウさんやミストさんに続いて見慣れない、しかし威風堂々とした冒険者が続いて入ってくるのですから注目を集めていますね。
講師陣の皆さんはそれをまったく気にせずティショウさんの後に続いていくのですが。
「さて、あらためて。俺がギルドマスターのティショウだ。今回は我らの要請を受けてもらい感謝する」
「我々も依頼として引き受けたのだ。お互い協力し合おう。なにせ、シュミット公国としても初めての取り組みだからな」
「わかっている。だが、お前さんたちには期待しているぜ? 数日前にスヴェインが錬金術師に火種を放り込んでくれたからよ」
「さすがにシュミット家の長子であるスヴェイン様ほどの働きはできないが……全力で応えよう」
「ああ。それで、細かい条件面だが。まず、住居の準備がまだできていない。まさか三日で来てもらえるとは想定外だからな」
「私たちも冒険者だ。宿暮らしには慣れているので気にしないでほしい。住居は空いている時間に各自で探すとしよう」
「え? 私どもは住まいも提供する予定でしたが……」
「そうなのか? 我々はいただいた報酬の中から居住費なども支払うものだとばかり考えていた」
「ふむ、これは今後の交渉でも事前に決めておかなければいけないですね」
「シャルロット様、そうしていただけると皆も助かるでしょう」
「はい。次回からはこのようなことはないようにいたします」
……そういえば僕がコンソールにいる間の拠点はいつまでもコウさんのお屋敷で良いのでしょうか?
最近は弟子の指導以外でも出歩くことが多くなってきましたし、別の拠点を探し移るべきでしょうかね?
「今回はどうする? 俺たち冒険者ギルドとしては四人分の住居を探してもらっている。依頼費用を考えれば一年間の家賃なんて誤差だ。俺たちとしてはこちらの顔を立ててもらいたいんだが」
「それではお言葉に甘えましょう。皆もいいですね?」
「はい、異存はありません」
「では住居は問題ありませんわね。宿も当方で確保していますのでしばらくはそちらに滞在してください」
「何から何まですまない。ここまで厚遇される以上は結果を出そう」
「そうしてもらえると助かる。ほかに望みはあるか?」
「すまないが今回の講師役を三ヶ月に一回の更新制として指名依頼を出してもらいたい。我々は冒険者ギルド資格を持っている。可能であれば冒険者に課される定期依頼達成を講師役を引き受けることで達成にしてもらえると非常に助かる」
「そちらについても問題ない、報酬は?」
「最低金額で構わない。今までもそれでギルド資格を更新してきた」
「承知した。ほかに条件は?」
「……私からは特にないな。他のものは」
エリシャさんの問いかけに首を振ることで回答するほかの講師陣たち。
皆さん訓練されていますね。
「現状問題ない。不都合が生じたらその都度話し合うことでどうだろうか?」
「当ギルドとしても問題ない。それで、指導にはいつから入ってもらえる? 明日か? 明後日か?」
「失礼ながら、私たちを舐めすぎだ。私たちは冒険者でもある。よほどの無理をしない限り当日から依頼に対応するのが筋だろう」
「……確かに失礼した。ではこれから指導にあたってもらいたい」
「わかった。訓練場まで案内していただけるか? その上で私たちを紹介してほしい。そのあとは冒険者の流儀で進めさせていただく」
「わかった。俺は少し後から行く。ミスト、案内と紹介を頼んだ」
「かしこまりました。それでは、皆様、こちらへ」
「ああ。それでは失礼する、ギルドマスター殿」
ミストさんとともに部屋をあとにする講師陣。
彼らがいなくなったあと、ティショウさんは緊張感からようやく解放されたようですね。
「……なんだよ、あの講師陣! 緊張感ありすぎだろう! いつもあんな感じなのか!?」
「そうですね。任務中はあのような感じです。任務から外れればそれぞれ思い思いに過ごしますが」
「ってことは今のやりとりも含めてお仕事かよ」
「失礼ながら、当然では?」
「ああ、くそ! 俺も古くさい風習に毒されてやがったか!」
「気がつかれたのでしたら改善すればいいのです。それよりも皆さんのあとを追わなくてもいいのですか?」
「確かに、様子を見に行かなくちゃなんねぇ。行くとするか」
「私たちもご一緒します。構いませんね、お兄様」
「そうですね。僕も今のシュミット流が気になります。一緒に見学させていただきましょう」
僕が国を出たあとどう進化したのか、これは是非とも見学しないとですね。
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