909. 今後の目標

 現状の確認はできました。

 次は、今後の目標を示しましょう。


「今後、可能ならば西のボスにがんばって勢力を拡大していただき、発言権を強めていただきたいと思います。間違った方向に向かわれると厄介ですが、いまのところは大丈夫でしょう」


「ふむ、その理由は?」


「南のボスやフリーになってしまっている北からの手出しを防いでもらうためです。僕の調べた限りだと、戦力に若干不安が残ります。北と南、同時に攻められてはどうにもならないでしょうね」


 これにはギルド評議会の皆さんも考え込んでしまいました。

 西のボスは僕が信用できる程度には悪事に手を染めていない。

 だが、ほかの連中が手を組んで攻め込むとなると一気に瓦解してしまう。

 そんな危うい状況であるんですよ。


「スヴェイン、対応策はあるのか?」


「一応は。ただ、コンソールの衛兵を使うことになります」


「コンソールの衛兵……北と東を混乱に乗じて取り押さえてしまうか」


「はい。いま、彼らには明確なボスがいないため、至る所で小競り合いをしている状況です。一般市民には被害が出ない場所で行う、という暗黙のルールはあるみたいですが、それが破られるのも遠くはないでしょう。これを機に、北と東は浄化してしまうのが得策です」


「なるほど。その話はわかった。情報は集まっているのだな?」


「もちろん。ここに」


 僕は一枚の地図を広げます。

 それはコンソールの新市街を含めた地図です。

 地図の上には至る所にバツ印が付けられており、そのバツ印も赤と黒に分けて付けてあります。


「ふむ、このバツ印は?」


「最近、小競り合いがあった場所と、裏社会の人間が本拠地にしている建物の場所です。赤は小競り合いのあった場所、黒は本拠地の場所です」


「はー、こうしてみると本拠地のすぐそばでやり合ってたり中間地点でやり合ってたりいろいろだなあ」


 冒険者ギルドマスターが呆れを含んだ様子で声をあげます。

 それには僕も同意ですが、これには勢力ごとの戦力差があるのでしょう。


「おそらく、本拠地のそばで小競り合いをしているところは勢力の小さなグループだと思われます。そうでなければ、わざわざ本拠地の近くにまで敵対勢力を近づかせないでしょうからね」


「なるほどな。で、錬金術士ギルドマスター。こいつらをどうやって捕縛するんだ?」


「基本的には人の手によって捕縛します。手を貸してくれる聖獣がいないか聞いて回りますが、本拠地の数と比べるとかなり少ない数しか集まらないと思ってください」


「お前の聖獣は使わないのか?」


「基本的には使いません。そろそろ、なんでも僕頼みというのもまずいでしょう?」


「違いねえ」


 こうして、あとは決行日を決めるだけとなりました。

 作戦の準備は隠れて素早くですね。

 僕の聖獣は……西の彼女の拠点を守らせるとしましょうか。

 間接的な手出しくらいはまだするとしましょう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る