908. 第一回ギルド評議会、説明

 ギルド評議会で一通り一般的な議題の話が終わると、特別な議題の扱いになります。

 今回は僕と西のボスとの一件ですね。

 隠すつもりもないので真面目に話しますか。


「……それでは、あくまでも個人的なつながりだと?」


「はい。個人的な資金を渡していますし、ギルド評議会として繋がっているつもりもありません。あくまで個人的にバックアップしているだけです」


「ふうむ……」


 これには皆さん考え込んでしまったようですね。

 まあ、ギルド評議会のひとりが個人的に暗黒街のボスのひとりとつながりがあるなんて人聞きが悪いでしょう。

 でも、僕は支援をやめるつもりはありませんが。


「スヴェイン、その暗黒街のボスは違法なことに手を出してないんだよな?」


「僕が調べた限りだとかなり黒に近いグレーゾーンのことはしていますが、違法とはいえないことしかやっていません。主な収入源は娼館の運営と地域の店に対するトラブル対策の用心棒代、あと、密造酒の販売が少々ですね」


「密造酒、ですか。それはかなりまずいですね」


「はい。なので、僕の方からやんわりと、密造酒の販売をやめるよう促しておきました。彼女としても密造酒の販売益は少なかったみたいですし、徐々に取引を小さくしていくとのことです」


「なるほど。しかし、錬金術士ギルドマスター。その言葉は信用できるのですかな?」


「信用するしかないでしょう。僕たちが強制的に踏み込んでもいらぬ犠牲が出るだけです」


 僕の説明に、発言したギルドマスターも黙ってしまいました。


 僕のやっていることは資金を流して援助する代わりに、法律に触れそうな部分を切り離していってもらうことです。

 彼女にとっても、密造酒の販売などはあまり利益を生まない厄介部門だったみたいなので、すぐ取引に応じてくれました。

 あとは、禁止している薬物などに手を染めていなければ、彼女の身辺調査は完璧でしょう。

 彼女と会っている限り、禁止薬物などには手を出していないようですが、念のためです。


「錬金術士ギルドマスターの主張はわかった。それで、残りの北、東、南の3ブロックはどうするのかね?」


「そこが困りものです。彼女の話では北と東の2ブロックは、例の悪神がらみの一件で混乱中。まとめ上げる者がいない状態がいまでも続いているのだとか。西の彼女は手を出す気がないようですし、南のボスは手を出そうとして痛い目をみているようです」


「なるほど、あの事件の余波がここまで響いているとはな。それで、南のボスというのは?」


「かなりの慎重派……いえ、臆病者なのでしょう、姿を確認できた試しがありません。主な収益の柱は密造酒の販売と人身売買。早めに潰したいところですね」


「こっちは懐柔しないのか?」


「懐柔できるほど頭がよくなさそうなんですよ」


 懐柔するにはされる方にも知性が要求されます。

 どうにも南のボスからはそれが感じられないんですよね。

 まったく、面倒くさい。

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