976. ボスとの面会
***アリア
「お嬢ちゃんがスヴェインの妻か。噂には聞いていたが、本当に美人だな」
裏社会のボスの使いだという女、まったく隙がありません。
ミライは気付いていないようですが、相当の手練れです。
用心せねばなりませんね。
「お褒めにあずかり光栄です。それで、スヴェイン様の代役を務めるのは私では不満でしょうか?」
「……いや、ギルド評議会と直接繋がっていないがある程度やりとりできる人材という意味ではちょうどいい。ついてきな」
「はい。ミライ、ギルドのことは任せますよ」
「わかりました。アリア様もお気を付けて」
私はこの女とともに錬金術士ギルドを出て新市街に入りました。
さらに何カ所か裏道を経由してから、小さな民家の裏口へと入り、その家の地下より地下通路へと入っていきます。
相当用心していますね。
「伺いますが、スヴェイン様も毎回このルートを通っているのでしょうか?」
「ん? 違うと思うよ。あいつはあたしらの先導なしでひょっこり現れる。さっきの家みたいな秘密の入り口は何カ所かあるが、そこを通ったっていう話も聞かない。まったく、どこから出入りしているんだろうね」
ふむ、時空魔法の応用でしょうか?
ですが、ワープは視認できない場所への移動ができないはず。
なにか特別な方法を使っているのでしょうね。
「そんなことよりほいほいついてきて大丈夫なのかい? えらく信用しているようだが?」
「いえ、信用しているなどではなく。いざとなったら力尽くで切り抜ける自信があるだけですよ」
「なるほど、確かにコンソールの怪童の嫁さんだ。触らぬ神に祟りなし、だね」
「わかりましたら、先導をお願いいたします」
「はいよ」
地下通路に入ったあともいくつかの扉を抜け、さらに地下に潜ったり地上に出たりしながら歩き続けます。
そして、ようやく一軒のバーへとたどり着きました。
なるほど、ここなら空から侵入される心配もありません。
「着いたよ。ママが奥で待ってる」
「はい。道案内ありがとうございます」
さて、いよいよ新市街のボスとのご対面ですか。
ちょっと緊張してまいりました。
柄でもありませんね。
「……おや? コンソールの怪童じゃないのかい?」
「はい。私はアリア、スヴェイン様の妻です。スヴェイン様の代理で参りました」
「代理。なにかあったのかい?」
「今朝、急に倒れて現在意識を失っております。霊薬を使って治療中ですので大事には至りませんが、体力が回復するまで目覚めませんので私が代理として参りました」
「なるほどね。さすがのコンソールの怪童でも竜災害まで重なると過労でぶっ倒れるわけだ。無理もない。で、あんたで代わりは務まるんだろうね?」
「スヴェイン様ほどギルド評議会への発言権は強くありませんが、錬金術士ギルドサブマスターのミライとは同じ人を夫に持つ仲間です。彼女と連携してギルド評議会とも連携をとりましょう。聖獣や竜とも対話ができます」
「わかった。それだけできれば代役として十分だ。コンソールの怪童が復帰するまでの間、よろしく頼むよ」
「ええ、よろしくお願いいたします」
とりあえず、最初の交渉は成立でしょうか。
このあと、どんな駆け引きが待っているのでしょう?
スヴェイン様も普段はどのようなことをしているのかまったく教えてくださらないので、代役をするときは困りものです。
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