990. シュミットの現状
さて、歓迎の支度も調いメインゲストであるディーンとフランカもやってきました。
シャルも一緒にやってきましたが、まあいいでしょう。
食事とは楽しむものです。
リリスの手により作られたフルコース料理に舌鼓を打ちながら、私はコンソールの現状を話しました。
主にスヴェイン様がいなくなったことによる交渉不安定です。
「そうか。兄さんがいなくなったら裏社会との連携が途絶えたか」
「はい。ギルド評議会がスヴェイン様に一任していたことも問題ともいえますが、あのボス相手ではギルド評議会のほかの方々では荷が重いでしょう」
「それほどかよ。一度会ってみたいな」
「顔合わせ程度ならできると思いますよ? 特になにもしないのでしたら、ですが」
「なにかするつもりはないさ。ただ、兄さんとそこまで渡り合える人物ってのが気になっただけだ」
「では、渡りを付けましょうか?」
「……いや、やめておくよ。兄さんが目覚めたとき、なにを言われるかわかったもんじゃない」
ええ、それがいい判断だと思います。
興味本位で会いにいっていい相手ではありません。
正直、なるべく会わない方がいい相手でしょう。
私もできる限り接触を避けたいです。
「それで、シュミットの方はどうなのですか? なにか変わったことは?」
「シュミットか……。コンソールが竜災害を受けたことを警戒して警備が増員されたな。こっちも各地でいろんな存在が目を光らせてはいるが、竜災害となると勝手が違うらしい」
「そうですね。聖獣たちであっても竜は脅威です。よほど弱い聖獣でもなければ倒されることはありませんが、倒すこともできません。竜種結界とはそれほどまでに厄介な代物です」
「俺たちの武器はそれを無効化するエンチャントがかけられてるから気にしたことはないんだけど、そんなに厄介なのか?」
「非常に強力な一撃を加えない限り破れない結界です。破ったとしてもその攻撃はかなり威力が弱まりますし、結界の修復も早い。慣れなければ面倒な相手ですよ」
「ふーん。なあ、シャル、そんなに強いのか?」
「私も竜種結界を持つ竜とは戦ったことがないのですが、カイザー相手に手合わせをしたことならあります。私の攻撃ではカイザーの竜種結界を揺るがせることすらできませんでしたね」
「シャルでもだめか。エンシェントドラゴンってことを抜きにしても相当厄介だな」
「シュミットの場合、防衛は聖獣たちに任せ、人は攻撃に専念するべきでしょう。ところで、フランカ。お義父様やお義母様は元気でしょうか?」
「はい。竜災害のことはとても心配しておいででした。それから、スヴェイン様が倒れられたことも」
「……あのスヴェイン様が倒れたのですからね」
「ええと、スヴェイン様はそんなに体のお強い方なのでしょうか?」
ああ、フランカは知りませんよね。
私たちの間では常識だったので忘れていました。
「スヴェイン様は『倒れるとそれだけ時間が無駄になる』というセティ師匠の教えを忠実に守っているのです。今回はあまりにも忙しかったので体が疲れを感じる前に限界を迎えてしまったのでしょう」
「そうだったのですか。それで、賢者セティ様はなんと?」
「セティ様は一度お見舞いに来たほかはなにも。私たちのことはよくご存じですし、飲ませた霊薬を教えると目覚めるまで安静にしていれば問題ないだろうと」
「なるほど。愛弟子のことですから心配なさっているかと思っていたのですが」
「コンソールに来たあとは私たちが平穏に過ごしているのを見聞きしていますからね。今回の竜災害は規模が大きく、こちらも竜が対応したため守りに残っていただきましたが、本来であれば前線に出るようなお方です。それだけ私たちへの信頼は厚いのです」
私もセティ様が残ってくださるからこそ、『帝』を討ちに行くことができました。
そこは本当に感謝です。
「セティ様だしな。それにしても、本当にリリスの料理は美味いよな」
「本当です。こんな方が普通のメイドをしていたのですか?」
「普通のメイドというよりスヴェイン様の専属メイドですね。本人がそう言って聞かないので」
リリスはリリスですし仕方がないでしょう。
彼女が謎なのはいまに始まったことではありません。
追求したところでのらりくらりとかわされますし、諦めてもらいましょうか。
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