991. ディーンの調査
翌日、私はディーンを連れてもっとも大きな戦闘痕が残っている現場へと向かいました。
もちろん、スヴェイン様とカイザーが敵の『帝』と戦った場所です。
この地はいまだに木々がなぎ足されたまま放置され、野生動物すら近寄りません。
幸い、街道から離れた場所で迎撃したために急ぎで復旧する必要はないことだけがよいことでしょう。
「……すごいな。シュミットでもエンシェントドラゴンと戦ったが、ここまでひどい戦闘痕なんて残らなかったぜ」
「互いに『帝』を出しての戦闘だったということもあります。竜族を統べる者同士の決戦、一歩間違えば大穴が開きますから」
「そこまでは至らなかったんだな」
「スヴェイン様とカイザーがうまく調整したのでしょう。相手は手加減する必要などなかったはずですし、こちらが過剰な痕跡を残さないように気を付けたというべきです」
「なるほど。それであそこまで消耗したのか」
「本来、元々人である私たちが『竜の帝』の力を使うこと自体、無理があるのです。それを長時間、高出力でとなれば消耗するに決まっています」
「それでも相手の『帝』を倒せたんだよな?」
「最終的には私が不意打ちで消滅させました。頭を失っても動き続けるなにかに変容した存在でしたからね。変容した結果、竜種障壁が弱まっていたのも幸いでした」
本当に、あれはいろいろと助かりました。
完全に正気を失っていたため、スヴェイン様とカイザーにしか意識が向いておらず、私が魔力をフルチャージする時間を与えることとなったのです。
竜と呼べないなにかに変容した結果、本来の竜種障壁にも変化があり、攻撃の威力が減衰されなかったことも幸いでしたね。
まったく、あのような相手とは二度と戦いたくありません。
「それで……邪竜族、だったか? あいつらはどうしたんだ?」
「攻めてきていたエンシェントドラゴンはすべて討伐。邪竜族の『帝』も滅び、『帝』の証である竜帝玉もスヴェイン様がストレージ内に保管してあります。邪竜族に残存勢力が残っていたとしても少数でしょうし、『帝』が現れることはありません。正直、やってくると瘴気で汚染されること以外、なんの脅威もなくなりました」
「それだけでも面倒そうだな。対策は?」
「コンソールなら聖竜が浄化します。シュミットなら聖獣に頼めば浄化してくれるでしょう。元を倒す必要はありますが、私たちにとって汚染された場所の復旧はさほど難しくはありません。生態系が一度滅びることを除いてですが」
ここが痛いのですよね。
海や湖であれば魚や海藻が。
山や平原であれば草木や野生動物が。
なにより、人の耕している農耕地に現れると農作物がすべてだめになります。
この点だけは注意しなくてはなりません。
「後手に回るしかないのか。わかった」
「監視網を敷いて攻めてくる前に発見し倒すしかないでしょう。邪竜族は搦め手を使わず、力押しの傾向があるので発見は難しくないはずです」
「わかった。ほかの……そうだな、復旧作業中の現場も見てみたい。案内してもらえるかな?」
「わかりました。ディーンも邪竜族と戦うことになったら汚染が広がる前に討伐することを心がけてください」
汚染が広がる前に対処する、これが一番の対処法なのです。
だからこそ、面倒なのですが。
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