992. ディーンの帰還

 ディーンはシャルとの協議も含め、やるべきことを一週間程度で済ませると帰国の準備を始めました。

 やはり将軍職に就く者が長期間国を空けているのは問題なのでしょう。


「兄さんが心配ではあるけど、無事ならそれでいい。問題は想像以上に深刻なコンソール周囲の被害だよな」


「いまは冬で交易もあまり活発ではないため問題になっていないだけですからね。建築ギルドはそこのところも理解して優先順位をつけているようです」


「シュミットからも人手を出すか?」


「いえ。新市街の住民へ仕事を与える意味合いもあるので、人を送ってもらうのは困ります。できれば作業用の魔導具を送っていただきたいのですが」


「作業用の魔導具か。アリア義姉さんが作るエンチャントアイテムじゃだめなのか?」


「それでもいいのですが、体に負荷がかかるのは変わりません。むしろ、一日あたりの作業量が増えるため、疲労が蓄積します」


「なるほど。じゃあ、父さんに話をつけて建築用の魔導具を借りてくるよ。大型のものになるが、扱い方さえわかればなんとかなるだろ」


「そうですね。それくらいはなんとかしていただきましょう」


 除染作業は聖竜や聖獣の仕事ですが、道の再建は人の仕事です。

 道具を使って効率化することは問題ありませんが、それも自分たちでやるべきでしょう。

 新市街から仕事を奪わないためにもね。


「それじゃあ、半月後を目処に作業用の魔導具を送ってもらう。ほかにはシャルからの提案で食糧支援というのがあったけど、食糧も足りていないのか?」


「いえ、そこまで足りていないというほどでは。しかし、元々新市街の方まで万全に行き渡っているとはいえません。それに、建築作業ででている方々への配給もあります。食事の方面は支援をいただけると助かりますね」


「そっちも了解した。これもまあ通るだろ。シュミットは備蓄も含めて食糧はたんまりと用意しているからな」


「ありがとうございます。ほかにシャルから出た話はありますか?」


「ん? 毛布を送ってほしいってのもでたな。こっちはなんとなく想像がつく。新市街の連中に対する配給だろ」


「そうだと思います。あとは、土木作業現場への配給か」


「そっちは足りてるんじゃないのか?」


「多くて困ることはありませんよ」


 あちらも人数分は確保していると聞きましたが、本当に足りているかどうかはわかりません。

 悪い噂が聞こえてこないということは、夜寝るときの寝具くらいは用意されているのでしょう。

 ほかにも数えだしたらきりがありませんが、あまりシュミットを頼るわけにも参りません。

 支援をお願いするのはこれくらいにして、あとは支援を待ちましょう。

 私とシャル以外に評議会からもお願いがいっているはずですしね。

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