119.最高品質への挑戦
「いいですか。これからふたりの畑で取ってきた薬草とふたりが作った魔力水で、最高品質のポーションを仕上げてみせます」
朝食後の一家の団らんが終わったあと、僕たちはニーベちゃんたちのアトリエへ移動しました。
もちろん、ふたりに最高品質のポーションを作ってみせるためです。
「はい!」
「わかりました!」
ふたりとも気合いは十分ですね。
僕が流す魔力の細かい変動に気がつけば、今週中の最高品質も夢ではないでしょう。
では、始めましょうか。
「行きますよ、よく見ていていください。…………はい、完了です」
「う~、やっぱり先生のポーション作製は早いです」
「でも、わかったこともあるよね、ニーベちゃん」
「はい、エリナちゃん! 最初の方はゆっくりと魔力を浸透させて、最後にドカンと魔力を注いでました!」
「うんうん。あとは……魔力の流し方も均一ではなく、少し波がある感じだったかな?」
「ですです! 均一な波長の波ができていました!」
「ほかには……なにかあったかな?」
「うーん。それ以外は特になかったような」
「それじゃあ、今まで出た注意点を参考にしてやってみよう、ニーベちゃん!」
「はいです! エリナちゃん!」
それぞれの錬金台に向かい、真剣に魔力操作を始めるふたり。
本当に切り替えがうまくなったものです。
「うーん、一回でほとんどの注意点を見抜かれてしまいましたね、スヴェイン様?」
「はい。あとは魔力水メインではなく、薬草メインになるように溶け込ませるだけですが……気がついてくれるか、それとも本能で気がつくか」
「スヴェイン様はどうだったんですか?」
「僕の場合は本能で気がつきましたね。そのあと、おばあさまの資料を探して正しいことを確認いたしました」
「なるほど。そこの指導はしないのですか?」
「今日はしなくともよいでしょう。明日以降、詰まっている様子でしたら考えます」
「うふふ、本当に厳しい師匠ですこと」
「僕がいる間に、自分たちで学べることは学ぶという姿勢をつけてもらいたいですからね」
「そうですわね。でも、あまり厳しすぎるもダメですからね」
「はい。そこの線引きがまた難しい」
僕たちが会話をしている間も弟子たちは全力でポーション作りに取りかかっています。
ですが、できるのは高品質ポーションばかり。
なかなか最高品質ポーションは難しいようですね。
あのやり方で高品質ポーションが完成していると言うことは、最高品質まであと一歩なんですが。
そして、それぞれが挑むこと十枚目、ついに念願の最高品質ポーションをニーベちゃん作り上げることができました。
「やった! やりました! 念願の最高品質ポーション完成です!」
「おめでとう! ニーベちゃん!」
「はい! でも、今の感覚を忘れないうちにもう一度トライしないと」
「ボクも負けていられないね。すぐに追いついてみせる!」
ニーベちゃんは十一回目も最高品質ポーションを作製、十二回目は集中が途切れたのか高品質ポーションとなってしまいました。
逆に、エリナちゃんは十二回目で最高品質ポーションを作ることができました。
本当に優秀な弟子たちですよ!
「お疲れ様です、ふたりとも。次はマジックポーションですが、それは午後からにしましょう。各自部屋に戻ってカーバンクルに魔力をあげてからお昼まで寝ていてください」
「そうするのです。最高品質ポーションを作るだけで、すごく集中力を使っちゃいました……」
「ボクもです。このあと、すぐにマジックポーションを作れと言われてもできる気がしません」
「しばらくは午前中にポーション、午後にマジックポーションの作製ですね。余裕があったら午後に付与術の練習もしましょう」
「はいです!」
「わかりました」
「それでは、ひとまずお休みなさい」
「おやすみです、先生方」
「失礼いたします」
魔力枯渇の症状は起こしていないので、それぞれひとりで戻しても大丈夫でしょう。
これから最高品質の薬草類が増えてくれば、魔力枯渇の可能性も出てきます。
それはそうなったときに考えるとしましょうか。
********************
ふたりの睡眠休憩も明けて、昼食も食べて午後の作業時間です。
午後はマジックポーションを作ると約束していました。
今回もまずはお手本からみせますが……これ、ポーションのときとまったく注意点が一緒なんですよね。
「うーん、ポーションのときと違う点が見当たりません」
「でも、ボクたちが最後に最高品質ポーションを作れるようになったときは、全体を均一に混ぜつつ、薬草に溶け込ませていく感じだったよね。今回も同じじゃないかな?」
「ですかね? まず、実験してみましょう!」
ま、弟子たちも半信半疑になりますよね。
さて、今回の結果ですが……。
「あれ? イメージどおりなのに最高品質になってくれません」
「ボクもだよ。もう一回やってみよう」
「そうですね。何回か試してみましょう」
そのあとも何回か試してみますが、最高品質にはなりません。
まあ、仕方がないんですけどね。
「うー、原因がわかりません!」
「そうだね。先生、なにがいけないんでしょう?」
「単純にふたりの錬金術スキルがレベル不足なんだと思います。今ふたりの錬金術スキルのレベルはいくつですか?」
「私は14です!」
「ボクは16です。これでもまだ足りませんか?」
「おそらく、製法はあっていても錬金術スキルのレベルが18はないと最高品質にはなってくれません。ちなみに、ポーションの方は14ぐらいだと考えていますので、ニーベちゃんはギリギリでしたね」
「う~、もっとたくさん錬金術のお勉強をしないと……」
「そうですね。職業が『錬金術師』であるエリナちゃんに比べれば、錬金術スキルのレベルの上がりやすさはかなり遅いはずです。その分は練習回数で補っていくしかありません」
「先生! どうしたらいいですか!?」
「無理に最高品質の手順にこだわらず、高品質の手順で高品質マジックポーションを作っていきましょう。最高品質の手順を踏むとそれだけ魔力を消耗し、試行回数が減ってしまいます。感覚を忘れないための訓練は必要ですが、それは最小限の回数にとどめて高品質マジックポーションを作ってスキルレベルを上げていきましょう」
「はい!」
「エリナちゃんも同じですよ。とりあえず、スキルレベルが最高品質に届くまではニーベちゃんと同じように高品質で数を稼いでください。スキルレベルが届いたら、最高品質を作り始めましょうね」
「わかりました!」
「大変結構。このあとはどうしますか? まだ集中力が続くなら錬金術を続けてもいいですし、気分を変えたいなら付与術を教えますが」
「「錬金術がいいです!」」
「わかりました。では、高品質な薬草類を使って高品質ポーション類を生産してください。ただし、魔力枯渇を起こさないように」
「「はい!」」
返事はいいんですけどねぇ。
ふたりとも、調子がいいと止めどころを知らず、すぐに魔力枯渇を起こすんですよ。
悪い癖まで僕に似なくていいのに……。
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