31.オルドの悩みと目標地点
「ふむ、じゃあ君はもうスキルレベルまで鑑定できるんだね?」
「はい、セティ様。理由はよくわからないのですが、できるようになっていました」
お父様の執務室を出たあと、セティ様と一緒に訓練場へと向かいながら話をしています。
アリアはすでに訓練場に行って、魔法の練習をしているはずですね。
『おそらく、ウィングとユニの鑑定した経験値が、お主にフィードバックされているのじゃろう。それでなければ、6歳でスキルレベル鑑定までできるほどのスキルレベルにはならぬ』
「ワイズ、経験値とはなんですか?」
『なにかをした経験から得られるもののことじゃよ。わかりやすく言えば、魔法を使えば魔法の経験値が、武器を使えば武器の経験値がたまる』
「なるほど……では、僕はウィングとユニが鑑定した経験値をもらっているということでしょうか?」
『そうなるな。おそらく、物珍しくて手当たり次第鑑定していたのじゃろう。その結果じゃな』
「では、あの2匹に感謝しないといけませんね」
「そうしてあげた方がいいでしょう。ワイズ殿、魔法なども同じ現象は起こりますか?」
『どうじゃろうな? 聖獣や幻獣、精霊の使う魔法は、ヒト族のそれとは異なるので起こらないと思うぞ』
「それは残念です。……そろそろ訓練場ですね」
「はい。……あれは、ディーンとオルド様ですね。剣術での勝負でしょうか?」
「またやっているのですね、オルドくんは。『魔術士』だと『剣術師』に剣一本で勝つのは難しいと言っているのに」
セティ様は、呆れ半分感心半分でふたりの試合を見ています。
僕も勝負の内容を見ていましたが……すぐに決着がついてしまいました。
「くっ……やっぱり僕では無理か」
「オルド、いい加減に剣だけで戦うのは諦めろよ。魔法も使えばいい勝負になるぜ?」
「いいや、僕の家は剣の名家だ! 剣のみで戦う!」
すさまじい気迫ですね。
でも、せっかく『魔術士』の職業をいただいたのですから、そちらも生かしたほうがいいと思うのですが……。
「オルドくん、前にも言ったでしょう。魔法使い系職業は重装備の成長速度が遅い。なので、先に魔法を伸ばすべきだと」
「セティ様。いや、しかし……」
『なんじゃ、お主、魔法使い系の職業を授かりながら剣士を目指すのか?』
「うわっ、喋るフクロウ!?」
「ワイズマンズ・フォレストのワイズ様だよ、オルド。俺も昨日の夜、紹介された。それから、兄上、お帰り」
「ただいま、ディーン。それで、いまの試合は……?」
「僕が望んでディーンに試合を毎日申し込んでいるのです。ですが、一本も取ることができないのです」
うーん、遠目で見ていた感じでは、ふたりの間にそこまで差はないように見えました。
なにが違うのでしょうか?
「スヴェイン、ふたりの差はなんだと思う?」
「セティ様。スキルレベルですか?」
「残念。ふたりのスキルレベル差は1しかない。最大の差は職業による身体能力補正なんですよ」
「職業によって身体能力にも補正がかかるのですか?」
「うん、まだ研究段階の話なんだけどね。『剣術師』だと身体能力に1.3倍程度の強化がかかる。『魔術士』は1.1倍くらいかな? それが勝敗を分ける最大の要因だと思うよ」
「……なるほど、確かにオルドの動きがよく見えると思っていました」
「僕はディーンの動きを追いきれなかった。そのような理由が……」
『まあ、仕方があるまい。得手不得手はなにものにもあるものじゃ。それよりも、オルドと言ったか。お主、剣士の道を諦めるつもりはないんじゃな?』
「当然です。剣の家系に生まれた以上は諦められません!」
『ならばよい職業がある。『魔法剣士』を目指せ』
「魔法剣士?」
「ワイズ殿、魔法剣士とは一体?」
『む、セティも知らぬということは失伝した職業か。まあ、よかろう。転職条件は剣術レベルが20以上、属性魔法のレベル20以上が6つ以上でなれるぞ。念のため覚えておいた方がいいのは【詠唱短縮】レベル10と身体強化系のスキルも覚えておくとよい』
「なるほど……オルドくん。5年間でワイズ殿がおっしゃった内容をマスターするのはかなり厳しいよ? それでも挑むかい?」
「……本当にそんな剣士があるのですか?」
『うむ。魔法と剣の両方を扱いこなし、ときには剣に魔法を宿して戦う。それが『魔法剣士』じゃ』
「セティ様、決めました。僕は『魔法剣士』を目指します」
「……わかりました。ワイズ殿、剣と魔法、どちらを優先して鍛えた方がよろしいでしょう?」
『苦手な方を優先すべきじゃ。苦手意識が抜けぬとスキルの成長も悪い。お主は魔法を使っていないであろう。まずは基本五属性をすべてレベル10まであげてみせよ』
「わかりました。それでは、早速魔法訓練場へ向かわせてもらいます」
オルド様は指針が決まるとすぐに行動に移す、そんな性格のようです。
剣を拾うと足早に、魔法訓練場へと向かってしまいました。
「ワイズ様、俺は『剣聖』になりたいんだけどどうすればいい?」
『剣聖か。それならば剣術レベルを30以上、ほかの基本的に武器レベルは20以下、身体強化系スキルはすべて覚えてマスターすること、それから鑑定スキルもレベル20必須じゃ』
「わかった。魔法は鍛えなくていいのか?」
『剣聖になる前に鍛えるのはありじゃな。剣聖になってしまうと、魔法スキルがほとんど伸びなくなる。回復魔法はある程度覚えておくと便利じゃぞ』
「回復魔法か……わかった。サンキュー」
『うむ、頑張れ。さて、儂らも魔法訓練場とやらに向かうか』
「そうですね。アリアの魔法も見てみたいですし」
「わかりました。では行きましょう」
オルド様の後を追う形になりましたが、魔法訓練場へと足を運びます。
そこではアリアが魔法の訓練をしていました。
「ほほう、これはこれは……」
『ずいぶん強力な魔法じゃのう』
「アリアの魔法ってこんなに強かったかな?」
「あ、スヴェイン様!」
僕が来たことに気がついてアリアが駆け寄ってきました。
あれだけの魔法を使っていたのに、疲れた様子がありませんね。
「アリア、かなり魔法を使っていましたが大丈夫ですか?」
「はい。よくわかりませんが、魔法を使うときかなり調子がよくって……」
『おそらくは精霊たちと契約したおかげじゃな。魔法を扱うときの効率が上がったのじゃろう』
「精霊契約にはそんな効果もあるのですね。初めて知りました」
『いまのヒト族は、滅多なことで精霊と契約はしないからのう」
「さすが、ワイズマンズ・フォレスト。よく物ごとをお知りだ」
『まあの。オルドという少年の魔法訓練は見てやらんでもいいのか?』
「オルドくんは契約の範囲外ですからね。まずはスヴェインとアリアが先です」
「セティ様、それでは……」
「はい。時空魔法の講義を行います」
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