241.遊び場で教育を
「剣を振るってこんなかんじー?」
「そうですよ。いまは力を込めすぎず、ゆるめすぎず、しっかり持ちましょう」
「もう一度使って見せて!」
「この程度でよけりゃ何度でも! 『ライト』」
「杖術とはな、こういう風にやるのじゃよ」
「うわーすげえ」
子供たちに連れられてやってきたいつもの公園。
今日はアルフレッドさんとテオさんも一緒です。
アルフレッドさんは杖術の演舞を、テオさんはライトの魔法の実演をしているみたいですね。
「なあ、テオの兄ちゃん。俺でも『ライト』って使えるようになるのかな?」
「うん? お前さんの職業は?」
「『魔法使い』だ。スヴェインの兄ちゃんに手伝ってもらうと毎回成功するんだけど、ひとりだとうまくいかなくて」
「ふむ……ちょっと俺と両手を繋いでみろ」
「こうか?」
「そうそう。いまから俺の魔力を少しだけ流すから感じ取ってみな」
「……あ、なんだか暖かいのがわかる」
「それが魔力だ。今の感覚、覚えたか?」
「覚えた!」
「よし。それじゃ、今の感じで両手に魔力を集めて魔法名を唱えてみな」
「わかった。ええと、暖かいのを集めて……『ライト』! すっげぇ、できた!」
「よしよし、上出来だ。でも、お前さんの魔力じゃすぐに魔力枯渇を起こす。あまり使うなよ?」
「まりょくこかつ?」
「体の中の魔力がなくなって気持ち悪くなることだ。若いうちから無理はするもんじゃねぇ」
「わかった!」
「よし、いい子だ! ほかにも魔法系の職業で『ライト』の使い方を覚えたいやつがいたら教えるぜ!」
テオさんは順調ですね。
アルフレッドさんは……。
「アルフレッドの爺ちゃん。俺『棒術使い』なんだ。やっぱりじょうじゅつとは違うのかな?」
「ふむ。細かく言えば違う。だが基本的な部分では似通っている。少し型の練習でもしてみるか?」
「うん!」
「よろしい。ほかにも真似がしてみたい者がいたら集まるといい。まねごとだけであれば、特に問題あるまい」
「「「わーい!」」」
おやおや、あちらも大人気ですね。
こちらに残ったのは女の子が多く、生産系の職業の子がほとんど。
錬金術は得意ですし、服飾や宝飾もこの場である程度はできますが、鍛冶はちょっと設備が出せませんね……。
「スヴェイン兄ちゃん、お裁縫もできたんだね」
「まねごとだけですけどね。複雑な服などは縫えませんよ」
「でもすごいよ?」
「ありがとうございます」
「私は『鍛冶士』なんだよなあ。お父さんが鍛冶ギルドは危ないから絶対に近づくなって」
「そうですね。鍛冶ギルドは暑いですし、焼けた金属片なども飛び散ります。子供が見学に行くのは危険かも知れません」
「でも、一度は行ってみたいなぁ」
ふむ……そういう要望もありますか。
今度、ギルド評議会に出してみましょう。
「おう、スヴェイン。少し相談なんだが」
僕が考え事をしているとテオさんとアルフレッドさんが戻ってきていました。
なにか問題でもありましたかね?
「はい、なんでしょう?」
「子供たちに『聖』の連中を見せてやりたい」
「『聖』の皆さんですか……」
あの方々はまだまだ基礎訓練の真っ最中。
子供に見せられるほどの腕前じゃあ。
「なにも腕っ節を見せたいわけじゃねえよ。修行をサボったらああなるって悪い見本を見せてやりてえんだ」
「ああ、なるほど」
確かに『悪い見本』ですね。
でも、そうなると今度は生産職の子供たちを置いてけぼりにしてしまいます。
「スヴェインお兄ちゃん。『聖』って戦闘系職業で一番すごい人たちなんだよね?」
「ええまあ。ただ、あの方々は……」
「私たちも一度会ってみたい!」
「うんうん! この街じゃ『聖』の人たちなんていなかったから!」
困りました。
子供の憧れを潰してしまいそうです……。
「難しいことは考えなくともよいのではないか、スヴェイン殿」
「そうだぜ。俺だって『賢者』だが、まだまだ修行不足。それを子供たちに見せてやりてぇ」
仕方がありません。
幻滅されなければよいのですが。
「わかりました。子供たち、『聖』と言っても努力しないとダメだと言うことを忘れないでくださいね?」
「「「はーい!」」」
「では行きましょう。シュミット公国の大使館ですか?」
「ああ。あそこの訓練場で訓練をつけてもらっている……はずだ」
「ではそこに。いなかったら、誰か行き先を知っているはずです」
ああ、不安ですね……。
子供たちが幻滅しませんように。
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