981. コンソール側の示した妥協点
****ミライ
「ふむ、裏社会のボスはそのようなことを」
「アリア様の言葉を信じるなら、そう言っていたそうです。もちろん、私たちが飲めないことも含めてだと思います」
「だろうな。現状、新市街の住人を旧市街に招き入れて仕事をさせるというのは難しい。我々ならともかく、個人経営の商店や工房では無理だろう」
「ですよね。錬金術士ギルドも新市街支部の事務や会計、検品は本部の人間が出張でやっています。信用するしない以前に付き合いがないので何者かわからない、というところでしょうか」
本当にここのところが困りますよね。
いまのところ新市街支部に混ぜ物や偽物のポーションが持ち込まれたことはないそうですが、それだっていままで持ち込んできた錬金術士の質がいいだけかもしれません。
はっきりいって相互理解とかそういうものが足りないんだと思います。
そこをどう埋めるかが今日の議題なんですけど。
「しかし、どうする? 錬金術士ギルドの持ってきた『旧市街の仕事を新市街に回す』というのもそれなりに難しいぞ」
「そうなんですか、医療ギルドマスター?」
「うむ。そもそも医療ギルドでは信用できるかどうかわからない者たちに患者の治療は任せられん。医療器具の製造だってそうだ。できることがあるとすれば、医学を学ぶ上での講習だろうが、明日をどう生きるか考えなければいけない者たちがどれだけ集まってくれるか」
「商業ギルドもですね。事務作業は心臓部でもあるので任せられません。それ以前に商業ギルドに勤めるための知識が足りているかどうか。ああ、馬鹿にしているのではなく、純粋に知識が追いついていないという意味です」
「そこんとこも教育してかなきゃなんねえな。冒険者ギルドとしては……まあ、ギルドの建築作業補助くらいなら任せられる。メインは建築ギルドに頼まなきゃならねえからその補助だな。そのあとは、解体場を任せられるように解体の練習をさせるか」
そのあとも各ギルドで案を出していきますが、どうにも任せられる仕事というのが限定的です。
旧市街でも人が足りていないわけではなく、ギルド志望者を絞り込んでいる状態ですから当然でしょう。
うーん、どうしたら。
「皆さん、まかせられる作業ってなにかないですかね? さすがになにもないというのはアリア様に顔が立ちません」
「そうだな。こう言うと響きは悪いが、最初は荷運びなどから始めて信頼を築いてもらうしかないな」
「そうですね。聖獣果樹園で取れる果物の収穫と旧市街までの運送、簡単な荷物運び、小さな元手からでも始められる簡単な商売の斡旋、といったところでしょうか」
「まあ、そんなとこだろうな。ボスが新市街全体の信用に関わるって釘刺しとけばちょろまかすやつも減るだろうよ」
「よし。アリア殿にはそれを手土産として次回の交渉をしてもらおう。心苦しいが、ギルド評議会から出せる精一杯の譲歩だ」
ここら辺が限界ですか。
アリア様、大丈夫ですかね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます