24.王宮図書館
謁見終了後、お父様は王都からの帰郷を3週間後と定めました。
また、特級品のポーション類は半年ごとに王家の輸送隊が来て各6,000本ずつ納めることになります。
そのとき聞いた取引金額がかなり高額だったのですが……よろしいのでしょうか?
それから一週間はまた自由な日々が続きます。
王宮に薬草類の種も、下級薬草の種は1,000個くらいずつ渡してきたので問題になることはないでしょう。
それと、発行された王宮図書館の入場許可証は腕輪式で、これをはめていることを門衛にみせればすんなり入れてくれました。
なので、この一週間はほとんどの日々を王宮図書館でアリアと一緒に勉強の日々です。
アリアも滅多に入れない王宮図書館を自由に使えるということで、大喜びでしたし問題ないでしょう。
お母様からは『もっと女性向けな場所に案内しなさい』と言われましたが。
「さすがは王宮図書館ですね、蔵書の内容が素晴らしいです」
「本当です。いままでわからなかった理論や、実際に発動していたけれど理由がわからなかった事象が説明されていますわ」
「アリア。ここの魔法理論、なにかに応用できませんかね?」
「ええと……マナチャージの効率化に役立ちそうです。ありがとうございます、スヴェイン様」
魔法関係の蔵書を簡単なものからとはいえ、読みあさる子供たちというのは大変目立っているようですね。
僕の右腕には王宮図書館のフリーパスを示す証が輝いているので誰も止めませんが、視線はひしひしと感じます。
この貴重な研究内容を頭に入れることに比べれば、大した問題ではありませんが。
「スヴェイン様、ここの魔術式の意味がわかりますか? この式を応用できれば水と土属性の魔法効率が上がると思うのですが……」
「どれどれ……む、困りました。途中まではわかるのですが、そこから先が理解できません」
「そうですか……。諦めるべきでしょうか?」
「なにか参考になるような資料を探して……」
探してきましょう、そう言おうとしたとき、僕とアリアの間に1冊の本が置かれました。
「はい、これ」
「え?」
「その魔術式が知りたいんだろう? だったらその本を参考にするといい。同じ魔術式について、より噛み砕いて説明されているからさ」
僕たちに1冊の本を手渡してくれたのは、長いハニーブロンドの髪をポニーテールにしたエルフの青年です。
エルフは見た目と年齢が一致しないので何歳かわかりませんが……ただ者ではない雰囲気ですね。
「そうなんですね。ありがとうございます」
「いやいや。僕のほうこそ楽しませてもらっているよ。君たちのような少年少女が王宮図書館にやってきて、なにをするかと思えば大人でも滅多に読まない魔術書を読んでいるんだから」
「……やっぱり初級の魔術書は人気がないんでしょうか?」
「そんなはずないんだけどね。むしろ、初歩的な研究内容を土台にしないと、より上位の術式を覚えるなんて困難だ。いまの若い連中はそれを理解していない」
「王国の魔術師の方がですか?」
「むしろ王国の魔術師になれた、という自負……いや驕りから基礎をおろそかにしている感じかな。その点、君たちは基礎をしっかり固めていっている。とても好ましいよ」
「ありがとうございます。でも、僕たちは基礎しかまだ理解できないので……」
「じゃあ、そういうことにしておこうか。スヴェイン、アリア。運がよかったら、またね」
エルフの青年は名乗る事もなく忽然と姿を消してしまいました。
アリアと顔を見合わせますが、答えは出ません
仕方がないですし、せっかく本を選んでいただいたのですから、エルフさんの本を読んでみます。
エルフさんの本は魔術式の構成や魔法の構造結晶など、さまざまな図示がされていてとてもわかりやすかったです。
エルフさんの本を元にいろいろな本を解読しました。
そして、そろそろ閉館時間なので本を棚に戻す……のは司書さんが手伝ってくださっていたのですが、ここでひとつ問題が。
「この本を戻す棚がない?」
「正確にはその本はこの王宮図書館の蔵書じゃないの。どこから持ち込んだの?」
「持ち込んだわけではありません。エルフの青年からいただいたものです」
「エルフの青年……ちょっと待っててね」
司書さんがどこかへ行き、すぐにまた戻ってきました
「その本、あなたたちが持ち帰っていいわよ。どうやらあなたたちにプレゼントされたものらしいから」
「よろしいのですか? 決して安くない本だと思うのですが……」
「大丈夫、確認は取れたわ。持って帰ってちょうだい。残されても取り扱いに困るもの」
「あの、スヴェイン様、とりあえず今日はいただいて帰ってもよろしいのでは?」
「そうですね。あのエルフの方には、いずれお世話になったお礼をすることにしましょう」
本の整理もようやく終わり、あとは帰るだけです。
帰ったあとも、アリアから一緒に勉強することになっていますし楽しみですね。
**********
ペガサスとユニコーンにまたがった少年と少女が帰っていった。
どちらか一方でもすごいというのに、双方を従えているというのがすごいじゃないか。
「セティ館長よろしかったのですか。あの本を渡して」
「構わないよ。あの本の内容をちゃんと理解してついていけることは確認したし、そこから更に発展系を考えようとする努力も見て取れた。あの歳にして末恐ろしいものだよ。できることなら、彼らの講師をしてあげたいのだが……」
「あら、王宮からの依頼書は読んでいないんですの?」
「うん、子供に時空魔法の手ほどきをやれってあれか? なんで僕がわざわざ……ってまさか」
「教える対象はシュミット辺境伯家嫡子スヴェイン様、先ほどいらしていた男の子の方ですわ」
「……なるほど。あの子が僕の教える対象ねぇ」
「あら、やる気になりまして?」
「そうだね。彼なら時空魔法を使って悪用することもないだろう。悪用すると考えるような人に聖獣が懐くはずもないし」
「では国王陛下からの依頼は、ひとまず受理という形でよろしいんですのね」
「ああ、構わない。楽しみになってきたなあ」
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