911. 作戦終了

 新市街北部と東部の浄化作戦は終了しました。

 最大の目標であった一般市民への被害はなし、よくできた方でしょう。

 先行部隊が殺されていた第8班以外の取りこぼしは軽微、第8班も聖獣たちの働きでなんとかなる程度まで押さえ込めたのですから上出来です。

 取りこぼした分はすべて聖獣たちが取り押さえていますからね。

 作戦は成功でしょう。


「よう、スヴェイン。みっともないところを見せちまったな」


 僕が全体の状況を確認していると、落ち込んだ顔のティショウさんがやってきました。

 そんなに落ち込むほど失敗はしていないのですが……。


「まあ、なあ。全体で言えば大成功の部類なんだろうが、8班の先行部隊が全滅していたのがな」


「それは仕方がありません。人が潜入する以上、なんらかの痕跡は残るもの。それを発見されて追跡されてしまえば、こちらが不意打ちを受けます」


「そうなんだが……なんとか助けてやる方法はなかったもんかな」


「難しいでしょうね。聖獣ならばそもそも苦手な場合は潜入自体をやりません。潜入ができる聖獣は基本的に姿を消せます。そんな相手と人間を比較しても意味がありませんよ」


「だよなぁ。俺たち、本気でお前に頼りすぎていたんだなあ」


「それに気が付けたのなら上々です。これからは僕がいなくても回る体制を整えてください」


「わかったよ。しっかし、こうして考えると、お前って本当に便利なやつだよな」


「手札が多いってそういうことです」


 数え切れないほどの聖獣と契約した結果、使える手札はどんな状況でも対応できるのではないかと錯覚するほどにまで増えました。

 もちろん、手札はしかるべきときに使わないといけないわけで、すでに手遅れになっている場合などは対応できません。

 そうでもない限り、僕の手札は万能でしょう。


「それで、このあとどうすりゃいい?」


「どうするとは?」


 ティショウさんが問いかけてきましたが、いまいち意味がわかりません。

 なにをすればいいのでしょう?


「このもぬけになった暗黒街をどうするかだよ。お前と付き合いのある西のボスに渡すのか?」


「渡しても受け取ってくれないでしょうね。彼女の手勢ではこの広大な区域を治めることができません」


「じゃあ、どうするんだ?」


「それはもちろん、コンソールが接収します。今後はコンソールが自治を行うんですよ」


 ティショウさんは納得したように首を縦に振りました。

 そうでもない限り、犠牲まで出して奪い返す理由もないでしょうに。


「でもよ、一般市民は俺たちに従うか?」


「協力体制を構築している西のボスの区域も含めてギルドの出張所を建てましょう。働き口ができて日々の生活が豊かになれば不満も出ませんよ」


「なるほど。さすがは元貴族、考えてんなあ」


「ティショウさんが考えなさすぎるだけです」


 ともかく、これで新市街をコンソールに取り込むための第一歩が踏み出せます。

 問題は南のボスと市民がどういう反応を取るかですが、そこは出たとこ勝負ですかね。

 そっちの対応もギルド評議会に任せましょうか。

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