682.滞在十日目:シュミット観光 二日目
さて滞在十日目、今日がシュミット最後の日です。
今日は家の皆全員、それこそサリナさんとミライさんも含めた全員でシュミット観光です。
出かける直前にディーンから声をかけられましたが。
一体何用でしょう?
「なあ、兄上。明日の朝食を食べたらコンソールに帰るんだよな?」
「その予定ですね。なにかありましたか?」
「ああ、いや。帰ったらユイ義姉さんに頼んでフランカのドレスを作ってもらえないか? あとは乗馬服とか訓練服とかいろいろ」
「おや、ディーンもフランカにほだされましたか?」
「あー、あいつを見てると心配なんだ。普段はお淑やかなんだが、ユニコーンに乗って走り回る姿は昔のアリア義姉さんを思い出すし……」
「わかりました。夜にでもユイに頼んで採寸してもらいましょう」
「頼んだ。俺も明日の午後には任務に戻る。シャルはもう少しシュミットに留まるそうだ」
「シャルはこちらでもやることがあるはずですからね。それでは僕は皆とシュミット観光に行ってきますので」
「頼んだ。ユイ義姉さんなら言わなくても超特急だろうが……なるべく急いでくれ」
「頼まなくても超特急ですよ」
皆に合流してユイにそのことを伝えるとやはりはりきりだしたのでこれは超特急でしょう。
服ぐらいならライウでも運べますし、問題ないですね。
「さて、今日はどこを観光してまわりましょうか」
「昨日下町は歩きましたし……どういたしましょう?」
「そうだよね。メインストリートは初日に見て回ったし。どこに行こうか?」
公王邸を出てそんなことを話しているとサリナさんが思い詰めた表情をしながらユイにお願いをし始めました。
サリナさんからユイにお願いというのも珍しい。
「ユイ師匠。お願いします、〝子供服専門〟の誓い、一度だけ破らせてください」
「……事情を」
「シュミットに渡りいろいろな服を見て回りました。メインはもちろん子供服でしたが……実は大人向けのドレスも見て歩いていたんです。自分のお金で大人向けドレスも数着購入しています、デザイン見本として」
「なんのために?」
「お姉ちゃんの、イナお姉ちゃんのドレスを作ってあげたくなったんです。シュミットの流れも取り込んだ私なりのお姉ちゃんのドレスを。一着だけ、一度だけです。どうか許可を」
「破門になる覚悟は?」
「……出来ています」
「よろしい。あなたに出す次の課題、エリナちゃんの帰郷までにマジックスパイダーシルクでイナさんのドレスを作りなさい。出来なければ破門です」
「え?」
「口に出した以上、取り下げさせはしません。皆、最初に行く場所だけど……」
「魔法布の卸売問屋ですね。わかりました、行きましょう」
「……いいんですか?」
「あなたが聞いてきたことです。出来が悪い物は認めません。布もレインボーウールより難しいマジックスパイダーシルク。生活系エンチャントはあなたが施しなさい。防護系エンチャントは私が施してあげます。そのためのエンチャント容量圧縮も大急ぎで習得すること。スヴェイン、帰ったらこの出来の悪い弟子に……」
「衣服用エンチャント圧縮台ですね? 素材は?」
「スヴェインが作れる最高の物で」
「オリハルコンになりますよ? そうなると扱いが更に繊細になります」
「それくらい出来ないと認めない。条件はわかりましたね?」
「はい!」
「よろしい。エリナちゃん、さすがに今年は帰郷しますよね? いつ帰郷の予定ですか?」
「秋に帰る予定です。予定していたのは秋の二カ月目、後半で二週間ほど」
「期限も決まりました。間に合わなければ即破門。エリナちゃんと一緒にヴィンドへと送り返します」
「わかりました。絶対に間に合わせます」
「結構。あなたに与える布はドレス三十着分です。足りなくなっても破門。理解できていますね?」
「もちろんです」
「では、行きましょう。ごめんね皆、サリナのせいで時間を使わせて」
「気にしませんよ。サリナさんも覚悟があってのことです。さて、参りましょうか。ドレス三十着分となると一軒で足りるかどうかも怪しいですし」
「そうですわね。急ぎましょうか」
マジックスパイダーシルク、それもドレス三十着分、全部で五軒を回ってようやく揃いました。
それらは一度ユイが預かり必要に応じてサリナさんに渡すそうです。
シュミットでも貴重な魔法布をそれだけ買っていくのですから白金貨十数枚を使っていますがユイは気にしていません。
サリナさんの実質的な卒業試験、どう出るのか見極めるつもりでしょう。
それが終わった頃にはお昼になっていたのでちょっと豪華なレストランで昼食としました。
最後の昼食と言うことで豪華にしましたが皆楽しんでくれたようでよかったです。
そのあとはまたメインストリートをぶらぶらとウィンドウショッピングに。
気になったお店があれば立ち寄って商品を見て回り、気に入った物があれば買うを繰り返していました。
次の目標が決まったサリナさんも真剣な目でドレスを目に焼き付け、必要なものがあったら購入。
ミライさんはミライさんでシュミットの市場価格調査に余念がなく、コンソールの物価と見比べて今後の参考にするつもりでしょう。
そして、また本屋に行けばサリナさんが今度は大人向けドレスのデザイン資料を買いあさり購入していきました。
次に立ち寄ったのは歴史資料館。
シュミットの開拓時代から現在までの歴史がすべて展示されています。
その歴史の中に僕の名前も出てきているのが恥ずかしいですが……薬草栽培とセティ師匠を連れ込んだのは間違いなく僕ですから仕方がないでしょう。
ニーベちゃんとエリナちゃんも大喜びでそれを見て回りますし……やめてほしいです。
そんなこんなで最終日の予定も終了。
あとは公王邸で最後の夜を過ごすだけですね。
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