1029. 木工ギルドでは
翌日、朝早くから鍛冶ギルドマスターと待ち合わせをして木工ギルドを訪ねます。
ここは歴史浅いギルドですが、各ギルドから木工製品を取り扱っていた精鋭たちが集められたエキスパートの集団です。
決して侮れないでしょう。
「なるほど。それで、錬金術士ギルドマスターまでおいでくださいましたか」
「はい。依頼するだけでしたら鍛冶ギルドマスターだけでも足りるでしょう。ですが、今回は新しい製品を作る必要があります。実践して作業の様子を見せてあげないと」
「それもそうですね。それでは、こちらへ。さすがに散らかっていますが……」
「その程度のこと気にしませんよ。いきましょう、鍛冶ギルドマスター」
「はい。本日はよろしくお願いいたします」
作業場へと案内していただきましたが、本当にギルド員たちがせわしなく作業をしています。
しかし、聖獣樹を木材として加工しているのにこれだけできれば上々でしょう。
これなら、今日教える技術もすぐに覚えてくれるはずですね。
「それで、錬金術士ギルドマスター。教えてくださる技術とは一体?」
「まあ、壁用の建材です。ただ、普通の火を押し当てても焦げず、魔法の炎でようやく焦げる程度。外が寒くても、中で暖房をきちんとしていれば部屋の中が寒くはならないという代物です」
「そんな便利な建材、なぜいままで教えてくれなかったんです?」
「難易度が結構高いんですよ。今回、鍛冶ギルドマスターから『騒音が出なくて炉を扱える部屋』というのがオーダーとして出たので、この建材を試してみようかと」
「まあ、そういうことでしたら。具体的にはどうやるんですか?」
「ちょっと待ってくださいね。あ、あそこの木板3枚いただきます」
僕はちょうどいい木片、つまりほかの木を切ったときの切れ端を見つけたのでそれを回収してきます。
そしてふたりのギルドマスターの前に戻ると、改めて持って来たものの内容を見せてから作業開始です。
んむぅ……これが意外と魔力を使うんですよね。
まあ、難しいのはコントロールで結合させること自体は問題ないのですが。
「錬金術士ギルドマスター、それがさっき話していた?」
「はい。聖獣樹の合板ですやたらと頑丈なため、組み立てるときも注意が必要となりますが、一度組んでしまえばよほどのことがないと崩れない、そんな家を建てられる建材ですね」
「な、なるほど。建てるときの注意などは後ほど聞きましょう。いまは、この建材の強度チェックです」
そう言って木工ギルドマスターはありとあらゆる方法を使い、合板を傷つけようとしました。
ですが、ひっかき傷ひとつすら入りません。
そういう品なんですよ、それ。
「うーん、本当に頑丈ですね。むしろ加工できるかが心配だ」
「加工についてもこのあとお話します。どうです、これで小屋を建ててくれませんか?」
「わかりました。これもいい経験でしょう。やってみるとします」
木工ギルドへの依頼も完了です。
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