930. 三日目、朝:作戦会議

 姿を現した邪竜の『帝』。

 さすがにこれは想定の範囲を超えています。

 相手が『帝』を出してくるとなると、こちらも『帝』を出さなければなりません。

 つまり、僕が全力を振り絞る必要があります。


 ただ、この状態って長続きしないんですよね。


 そこも踏まえ、一度カイザーの元に戻り作戦会議です。


『邪竜族の『帝』か。邪竜族め、本気で聖竜族を滅ぼしに来たか』


「そう考えるのが自然でしょう。ただ、聖竜族がコンソールを捨てて逃げ出せば聖竜族を滅ぼすことはできませんし、やることが穴だらけに感じます」


『まあ、確かにな。聖竜が『宝』を捨てて逃げ出すなどあり得ないとはいえ、ないとは限らない。ましてや、相手は聖竜族の里を知らないのだろう? どうやって聖竜族を追い詰めるつもりだ?』


「そこも謎なんですよね。つまり、作戦が穴だらけなんです」


『邪竜は力押しの傾向があるとはいえ、古代竜エンシェントドラゴンまで愚かではないはずだ。それがどうしてこんなことを?』


 ここが僕も引っかかっているところなんですよ。

 邪竜族の真の狙いは聖竜族の殲滅でしょう。

 ですが、そのためにコンソールを囮に使うのはかなりリスキー、というか、場合によっては意味がない方法だったりします。

 そう考えると、今回の一連の行動は、すべて理解不能としか言えないんですよね。


『……ともかく、理由を考えるより、目の前の『帝』対策だ。スヴェイン、アリアはまだ呼ばぬのか?』


「アリアは最後まで隠しておきたい手札です。今回、邪竜族の動きがおかしい以上、なにか裏がありそうですからね。最大火力は最後まで伏せておきたいところです」


『竜を容易く殺す魔法使いの存在は知られるべきではないか。では、どうやって迎撃する?』


「この地で僕とカイザーがメイン、古代竜エンシェントドラゴンにはサポートをお願いします。ここを抜かれるとあとはコンソールまで一直線ですので、『パンツァー』とアリアが動くしかなくなります」


『妙なプレッシャーをかけてくるな……』


「事実そうなのだから仕方がありません。『パンツァー』はできる限りほかの方角の守りをお願いしたいところです」


『わかった。この地で迎え撃とう』


「頼みましたよ、2匹とも」


『おう』


『帝の命ずるままに』


 さて、これでこちらの体勢は固まりました。

 あとは邪竜の『帝』がどう動くか次第です。

 できればこの地を通過してもらいたいものですね。

 陣形を組み直すのも大変なんですから。

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