変わりゆくコンソール
157.弟子たちの現状
「先生お久しぶりです!」
「お久しぶりです、先生。戻られたということは故郷の方はもう大丈夫なのでしょうか」
元気いっぱいなニーベちゃんと落ち着いた感じのエリナちゃん。
ふたりも変わらず元気でいてくれて良かったです。
服装も前までの袖を絞った服装から袖や襟に余裕のある服装となり、隙間からそれぞれのカーバンクルが顔を出していました。
出歩くときもちゃんと連れ歩いてくれているのでしょうか?
「ふたりとも、これから応接室で皆様に経緯を伺う。気になるのならついてきなさい」
「いいのですか、お父様!」
「いいんでしょうか?」
「どうせ、お前たちもあとから聞きたがるのであろう。それならば一度に聞いてしまった方が二度手間にならず、スヴェイン殿たちに負担がかからないというものだ」
「わかりました! あの、それで、シャルさんのとなりにいるエルフの方はどなたでしょう?」
「ああ、申し遅れました。『賢者』セティと申します。スヴェインとアリアの師匠となりますね」
「わ、わ! 先生たちのお師匠様です!」
「すごい人が来てくれたね! ニーベちゃん」
「いや、そこよりも『『賢者』セティ』であることに反応してだな……」
「いいではありませんか、コウ殿。純粋で曇りのないまっすぐな良い少女たちです。僕をただのスヴェインとアリアの師匠として見てもらえるとはとても好ましい」
「気分を害されなければよろしいのですが……応接室はこちらです。ニーベとエリナも一緒に来たまえ」
「はい!」
「わかりました」
応接室に移動してからはシュミット辺境伯領に戻ってからの経緯を説明いたします。
ふたりとも僕が聖獣を従えていることは知っていても、エンシェントドラゴンクラスまで従えているとは考えてもおらず驚いていましたね。
コウさんは冷や汗をかいていましたが。
その後は王家から王家直轄軍の旗をもらい各地の紛争を鎮めて回ったこと、国賊となった王弟派を捕らえたことなどを説明します。
さすがに僕が個人でそれほどまでの戦力を有しているとはコウさんも考えてもみなかったらしく、終始冷や汗をかき続けていました。
そして、その後にシュミット辺境伯領はグッドリッジ王国を離脱、シュミット公国として独り立ちしたと伝えました。
「先生、この三カ月あまりですごいことをしてきたのです……」
「それにエンシェントドラゴンですか……先生がおっしゃる以上嘘ではないのはわかっていますが信じられません」
「そうでしょうとも。一個人がエンシェントクラスのドラゴンを率いるなど、個人で国を滅ぼせると宣言しているようなものですから」
「……なるほど。それでおふたりはあれほどかたくなに国や地方に属することを嫌っていたのですな」
「はい。本当ならば錬金術師ギルドマスターの椅子もおりたいのですが」
「スヴェイン。それはあなたが勤め上げるべき役職です。この国のためなどとは考えなくてよろしい。この街の錬金術師を正しい方向に導いてお上げなさい」
「……師匠がそういうのでしたら。それよりも師匠、錬金術師ギルドマスターの椅子にご興味はありませんか? 僕は外部講師でも大丈夫ですので」
「今更、僕が世俗のことに興味を持つとでも?」
「ですよねぇ……」
はあ、後継者選びが本格的に難航してきました。
ニーベちゃんやエリナちゃんが育ったあとでしたら譲っても構いません。
でもそれは二十年以上先の話。
ああ、頭が痛い。
「先生! そろそろ私たちが話してもいいですか!?」
「これ、ニーベ!」
「先生の話はほぼ終わったと思います! なら、私たちの成果報告をしたいのです!」
「そうだね。先生、聞いていただけますか」
「師匠、シャル。おふたりの話があとになってしまいますが構いませんか?」
「僕もスヴェインの弟子というのには興味があります。是非聞きたいですね」
「私たちの話は今日明日でどうこうなるものではありません。スヴェインお兄様の話を優先してください」
「許可が出ました。ふたりはどの程度の課題をこなしましたか?」
「ふっふーん! 十カ月分は終わりました!」
「それから毎週特級品のポーション類も冒険者ギルドに渡せるようになりました。先生、あんな条件だなんて気がつきませんよ……」
「だから言ったのです。鑑定は細かいところも見逃さないように、すべてのものを調べるようにと。これだけヒントを与えたのですからあとはスキルレベルの問題だけでしたでしょう?」
「はい! スキルレベルも20になってから作れるようになりました!」
「ボクはすぐに作れるようになったんですけど、ニーベちゃんは苦労しましたよ……?」
「それが職業補正というものですわ。その分、魔法系の課題は逆でしょう?」
「はい! 魔法系の課題は私の方が先に終わります!」
「やっぱり職業補正は厳しいですね。ボクはかなり大変です」
「それが正しいあり方です。今後も偏らずまんべんなく育てていきますので容赦しませんよ」
「はい! よろしくお願いします、アリア先生!」
「よろしくお願いします。この三カ月あまりで魔法に対する苦手意識もすっかり抜けました」
「よろしい。それではこのあとどういたしましょう?」
「うーん、まずは師匠とシャルのホテル選びからですかね」
「ホテル? おふたりの泊まる宿はまだ決まっていないのですか?」
「はい。街についてすぐにネイジー商会へ行ったもので」
「そう言うことであれば我が屋敷でしばらく逗留されてはいかがでしょう?」
「ふむ。弟子たちが毎回お邪魔になっている上に僕たちまで。良いのでしょうか?」
「構いませんとも。スヴェイン殿たちには毎回娘たちの指導をよくこなしていただいております。その恩に報いるためにもお泊まりいただきたい」
「それではお言葉に甘えて。ただ、泊まらせていただく以上宿代はお支払いいたします。それが最低条件です」
「……スヴェイン殿たちのお師匠と言うことは譲らないのでしょうな」
「はい、師匠も頑固です」
「わかりました。宿代は受け取りましょう。あらためて今日のご予定を伺ってもよろしいでしょうか?」
「ふむ。初日は宿選びで潰れるものだと考えていました。どうしますか、シャル」
「そうですね。お兄様、この街の代表者に会わせていただく事は可能でしょうか?」
「全員とは参りません。可能なのは予定が空いていたとして、冒険者ギルドマスターと商業ギルドマスターになりますかね。それ以外のギルドマスターになると医療ギルドのジェラルドさんもですが、お忙しいでしょう」
「わかりました。それではそれらの方々とだけでも構いません。面会させていただけますか?」
「ええ、僕も戻ってきた以上、おふたりには顔を出す必要があります。そのついでという形になってしまいますが問題ありませんね?」
「はい。正式なごあいさつは正式な場でいたします」
「では決定です。アリアは?」
「私もご一緒します」
「了解です。師匠はどうしますか?」
「せっかくですのであなたの弟子の腕前を見てみたいと思います。そのあとは、庭で九尾の狐、メンと少し遊んできましょう」
「承知しました。コウさん、各自このように動かせていただきます」
「わかりました。……ああ、それから錬金術師ギルドのサブマスター、ミライ様からも伝言がありましたな。『戻ってきたのであればすぐにでも錬金術師ギルドに来てほしい』と」
「それも承りました。冒険者ギルドと商業ギルドのあとになりますが、錬金術師ギルドにも顔を出します」
「そうしてください。では、私は商会の方へ戻らせていただきます」
「僕はスヴェインの弟子の腕前を拝見だね。基本的に口出ししないから緊張しなくていいよ」
「スヴェイン先生の師匠と言うだけで緊張するのです……」
「頑張ろう、ニーベちゃん」
コウさんは宣言どおり商会に戻られたようで、師匠は弟子ふたりを連れてアトリエへと向かったようです。
さて、僕たちも行動を開始いたしましょう。
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