475.ヴィルジニーの見習い卒業 中編
翌日からもまたギルドでは高品質マジックポーションの作製と魔力枯渇の回復を繰り返します。
講師に入ってくださる先輩方からは『お前、本当に今月の給金覚悟しろよ?』と言われていますが……なんででしょう?
そんな中、私たちが講義を受けている最中に講師役の先輩以外の先輩がアトリエへと飛び込んできました。
緊急事態でしょうか?
「どうしたんですか、先輩。急に入ってくるだなんて」
「おう! どうしてもすぐに成果を教えたくてな!」
「成果……まさか、ミドルポーションの一般品質完成ですか!?」
「おうよ! 今まで低品質で散々悩んでたがようやくだ! ほれ、お前も確認してみろ!」
「はい! うわあ、本物の一般品質ミドルポーション。遂に数年の研究成果が出たんですね!」
「ああ! 安定なんてまだまだ先だが……これでまた一歩前進だ!」
「ああ、うらやましい! 私たちも早く追いかけたい!」
「そう言うだろうと考えていた。講師は交代してやる。三階に戻って研究してこい」
「申し訳ありません! あと、お願いします!」
今日、講師を務めてくださっていた先輩は駆け足でアトリエを飛び出して行き……代わりに後から入ってきた先輩が私たちの講師になりました。
ああ、あれが私の追いかけているもの。
私も一刻も早くあの中に加わりたい!
「……ん? ヴィルジニー、なにか質問があるか?」
「あ、ええと……」
「質問があるなら答えてやるぞ。俺が答えられる範囲でならだが」
「では、失礼します。どうやったら少しでも早く追いかけられますか?」
「……へえ。覚悟は決まってるだよな?」
「当然です」
「わかった。お前は……少しなにもしないで待ってろ。自習させて魔力枯渇を起こされても困る。残りの連中は俺が戻るまで自習だ」
それだけ告げて先輩は出て行かれ……数分後、戻ってくると私だけを連れ一階奥にある打ち合わせスペースへと案内してくださいました。
そして、覚悟が決まっているなら中で人が待っているから入れとも。
誰かが待っていらっしゃるのでしたら早く入らないと。
とりあえずドアをノックしてみると女性の声で入室許可が出ました。
ドアを開けてみるとそこにいたのは……ギルドマスター様とサブマスター様!?
「ようこそ、ヴィルジニーさん。まさかこんなに早く機会が来るなんて考えてもいなかったのですが……第二位錬金術師からの推薦です。今から昇級試験を始めます」
「え?」
「第二位錬金術師があなたの中にその覚悟を見たと。まあ、席に着いてください。失敗したとしても怒りませんから」
「は、はい!」
え、昇級試験!?
嬉しいけれど……こんなに早く!?
「お題ですが見習いの卒業試験の内容は『高品質マジックポーションを五回中四回成功』です。肩の力を抜いて自分の実力を見せてください」
「わかりました!」
うん、緊張はするけれどこれはいつも通りの高品質マジックポーション作り。
普段通りにやれば失敗なんてしない。
実際、緊張してはいたけれど普段通りに高品質魔力水も作れたし高品質マジックポーションも作れました。
五回中五回とも成功です。
「すべて成功です。文句なしの昇級ですね、ミライサブマスター」
「うう、サブマスター呼びがまだ胸に突き刺さる……」
「呆けていたら……」
「はい! 文句ありません、ヴィルジニーさんは昇級です!」
「まあ、そういうわけです。ヴィルジニーさん、あなたをただいまから第一位錬金術師とします」
あれ、一般錬金術師じゃなく第一位錬金術師?
「え、第一位錬金術師? 一般錬金術師ではないのですか?」
「うん? 第一位錬金術師と一般錬金術師の差って聞いていませんか?」
「はい。一般錬金術師の上が第一位錬金術師ですよね?」
「ああ、なるほど、説明不足でした。一般錬金術師と第一位錬金術師の差。これは本人の熱意だけなんですよ」
「え?」
「支部ではウエルナさんに認められた者しか第一位の名とローブを与えられていません。本部でも僕が認めなければ与えませんが、あなたは文句なしの合格ですよ」
「でも、私って毎日何回も仮眠室に行って……」
「それは僕の弟子から最大魔力向上トレーニングを聞いているからでしょう? 実際、ポーションの納品数はあなたがほかの方よりも遙かに多いです。僕の弟子にはギルド員にまでトレーニング方法を教えるなと言いたいのですが……あなたのことがよほど気に入ったんでしょうね」
「それじゃあ……」
「はい。あなたは第一位錬金術師です。あなたを昇級させたことでいろいろと認めてあげることができます。僕の弟子が指導する事、資料室の立ち入り、研究内容の自由、薬草栽培の参加などです。第二位錬金術師たちによる講義はこれまで通り行いますが、あなたは最高品質に手を伸ばしていただいて構いません。おそらく、最高品質ポーションはまだスキルレベル不足でしょう。でも、最高品質魔力水は作れるはずです。そちらを練習しても構いませんよ」
「ありがとうございます!」
「では、こちらを。第一位錬金術師のローブです。ああ、この後、しばらくお時間をいただいてもよろしいでしょうか?」
「はい、構いません。なんでしょうか?」
「あなたをある錬金術道具店へ案内します。あそこの店主にはいつもご迷惑をおかけしているので、早めに引き合わせておかないと」
「はあ」
錬金術道具店?
錬金台とか錬金触媒とか錬金術に関わる道具が売っているお店のことだけれど……ギルドマスター様が直々に案内してくださるお店って一体?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます