763. ホリーの休憩

 シュミット講師陣による騎士団長と魔術師団長の説得は大成功に終わったようです。

 自分たちもあの力の一端を手に入れることが出来るなら、他国の指導を受けるなど些事なのでしょう。

 すぐにでもシュミット講師の派遣を決めてほしいというふたりに対し、ラング王は少し落ち着くように言っていますしね。


「お前たちの熱意はわかった。しかし、段取りというものは存在する。この街にはシュミット公国の大使館もあるのですぐに話をつけよう。少し待ってくれ」


「はい、ぜひに!」


「ああ、魔術の真髄とはあれほど遠かったのか!」


 ふたりとも鍛えることには貪欲なようです。

 ラング王が見込んで要職に据えているだけあり、人格面もばっちりですね。


 さて、そうなるともうひとつの目的、ホリーの修行風景の確認になるのですが、そちらは今日できませんでした。


「先生、ホリーはいま休んでいるのです」


「魔力を使い果たして仮眠中です。時間的にも遅くなってきていますし、今日の訓練は起き出してきたら簡単な指導だけして終わりにしたいと考えています」


 このふたりも本気でホリーの指導にあたるようになりました。

 いままでは嫌々だったのが、熱心に面倒を見るようになったんですよね。

 秋にヴィンドへ帰郷してから変わりましたから、そのタイミングでなにかがあったのでしょう。

 いい方向に変化してくれているので好ましいです。


 ですが、ラング王たちは「魔力を使い果たして仮眠」という言葉にショックを受けたようですね。

 さすがに子供に無理をさせすぎではないかと。

 うーん、秘密の話なのですが、ジェラルドさんも頷いてくれていますし教えてしまいましょうか。


「あの、実はですね。魔力を魔法などで使い果たして仮眠などが必要な状況になった場合、仮眠など自然な方法で回復させると最大魔力量が少しだけ上がるんですよ。これは僕の実体験でも理解していますし、シュミットでもコンソールでも実際に証明されている理論です」


「なんと。しかし、そこまでホリーにしてもらっても構わないのか? ホリーは……」


「最初は鼻持ちならない我が儘娘でしたね。それがプライドをへし折られて従順になったあと、自信を喪失しすぎてなにも出来なくなりました。おかげで僕の弟子も苦労したようですが、いまは自信も取り戻し頑張っているようです」


「私はそれを確認しているからいいのだが、子供たちはな……」


「では、明日また来てみましょう。ニーベちゃん、エリナちゃん、明日の訓練はいつ頃始めますか?」


 ニーベちゃんは少し考え、結論を出してくれました。


「お昼過ぎ、作業が終わった頃の2時過ぎなのです」


「わかりました。ではその頃に」


 メモリンダム一行には宿も手配してありますしそこで休んでもらいましょう。

 集合は明日の昼食を取ったあとあたりがいいですね。

 2週間前といまでどれだけ変わっているか、ちょっと楽しみです。

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