997. セティの知ること

 カイザーのところでは、聖竜族の遺跡になにかあるかもしれないという情報が得られました。

 それはそれとして記憶にとどめておきましょう。

 正直、いまのコンソールから長期間離れるのは厳しいです。

 僕の拠点でしたらなにかあってもすぐに戻ってこられますが、聖竜族の住処となると聖竜族の速さをもってしても数日がかりです。

 エンシェントドラゴンならば数時間ですが、その数時間の間に滅ぼされかねないのが現状ですからね。

 いつになったらいけるのか。


 あちらはそれだけでしたが、もう一カ所知っているかもしれない人物に心当たりがあります。

 セティ師匠です。


「ふむ。人竜族に腐敗竜か。僕も名前を聞いたことがあるくらいだね」


「セティ師匠でもですか」


「スヴェイン、あれらの活動していた時期は数万年前だ。人竜族はある日突然姿を見せなくなったと伝承に記されていたし、腐敗竜はその特性を恐れた黒竜や邪竜も含む竜族の連合軍で根絶やしにされた。逆をいえば、黒竜や邪竜すら厄介だと感じていたのが腐敗竜だね」


「あの黒竜族と邪竜族がほかの竜族と手を結ぶとは。そこまでして滅ぼしたかったんですね」


「滅ぼしたかったんだろうね。腐敗竜の毒は竜族にすら効いたとされる。あの、触れただけですべてのものを汚染する邪竜すら毒に負けるんだ。ただごとじゃない」


 すべてを滅ぼして生きている邪竜族すら危険を感じるほどの毒素ですか。

 本当に危険な存在ですね。


「コンソールで使われた麻薬の最終報告書は僕も一緒に作成したものだ。前にも言ったが僕の知識じゃあれが腐敗竜の毒素を流用したものかは判断できない。非常に厄介な性質を持つカビだということしか判断できないね。『パンツァー』が腐敗竜の毒に似ているということはそういうことなんだろうけど」


 やっぱりそうなりますよね。

 セティ師匠にも研究を手伝ってもらいました。

 そのときも毒物の元となった『なにか』を特定できずに終わったんです。

 いまから掘り返すのも難しいでしょう。


「それで、カイザーが言っていた聖竜族の遺跡だっけ。それってどれくらいかかるんだい?」


「どれくらいとは?」


「距離の話だよ。スヴェインじゃどう考えても行っている暇がないじゃないか。僕が代わりに行って調査してくるよ」


「自分の知識欲を満たしたいだけでは?」


「もちろんそれもある。だが、いまコンソールを長く離れられないのは事実だろう?」


 痛いところを突いてきますね。

 ですが、代わりに行ってくれるのでしたらありがたいです。

 ここはセティ師匠の言葉に甘えましょう。

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