998. 現状で取れる対策
結局、ふたりとも有効な打開策を示してはくれませんでした。
どちらにとっても未知の存在ということは仕方がないでしょう
おそらく『パンツァー』に聞いても、『人のことはよくわからん』と返されますし。
まずは、現状で取れそうな対策をまとめておきましょうか。
「最初に取り組まなければいけないのは、可能な範囲での取り締まり強化。裏社会のボスも協力してくれているので、新市街の裏社会からもあぶり出され、表に出てこざるを得なかったところを捕まえてしまえばいいわけですね」
裏社会のボスもあの麻薬には強い拒否反応を持っています。
少量の摂取だけで発見が遅れれば数日とかからずに命を落とす麻薬。
そんなものが出回られると、裏社会の秩序が乱れますからね。
そのため、あの麻薬の取り締まりには非常に厳しく、売人を見つければすぐに捕まえて拷問にかけているという噂さえ聞きます。
このような噂が裏社会に流れた結果、表の方に売人が流れでてきて衛兵に捕まるケースですね。
僕たちはそんなきつい拷問はしませんから。
薬物を使って知っていることはすべて教えていただきますが。
「取り締まりに失敗しても初期段階であれば救命可能です。薬の在庫を切らさないようにしましょう。薬としての薬効を保存瓶を使っても2カ月程度しか保証できないのが問題ですが、それでも常備するしかないでしょうね」
新型麻薬の初期症状を治療する薬はなんとか開発できています。
初期症状の段階でしか効果を発揮しないものですが、悪化させずに治療できたケースがほとんどですのでかなり有効な薬でしょう。
常備はしておくとして、あまり使いたくない薬ですね。
「各門の出入り警備も竜災害以降厳重になっています。こちらは麻薬事件と直接関係ない話ですが、取り締まりが厳しくなったことは、いまのコンソールにとっていい傾向でしょう」
コンソールは自由な商業のできる国です。
ですが、同時に責任も負わなければなりません。
竜災害以降、竜災害の影響を受け、除染がまだ終わっていない汚染された木々を持ち込もうとした輩が何人かいたのです。
本人は置物として売ろうとしていたと釈明していましたが、この木を水道などに放り込まれたら大変なことになっていました。
あれ以来、出入りの際の荷物を厳しく取り締まるようになり、それに伴って人の出入りも減りましたが、それは仕方がないでしょう。
いまのコンソールは厳戒態勢の時期です。
市民に恐怖を与えるわけにはいきませんが、多少の行動制限は大目に見ていただかないと。
「それにしても、この態勢はいつまで続くんでしょうね……」
原因がわかっていればそれを取り除くまでなのでしょうが、今回は麻薬の出元が不明です。
竜災害も裏で糸を引いたものがいるらしいことは聞きましたが、それがどのような存在なのかはまったくの不明です。
市民に不安を与えすぎないためにも、ある程度経ったらもう少し警戒態勢を緩める必要がありますね。
それをいつにするのかは議論の余地がありそうです。
体力がまだ快復しきっていないのもありますが、早く研究の日々に戻りたいです。
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