692.英才教育機関指導開始 前編

「ユリナ、ちゃんとお弁当とハンカチは持った?」


「持った!」


「街の中は聖獣様が見守ってくれているけれど暗いところに近寄っちゃダメよ? あと英才教育機関の講習が終わったらすぐに帰ってきてね」


「うん!」


「それじゃあ、気をつけて行ってらっしゃい。お勉強頑張ってね」


「はーい!」


 わたしは普段行っていた『ウサギのお姉ちゃん』の講習会じゃなくて『えいさいきょういくきかん』の講習会に行くの!


 最初は青いお水も作れないらしいけれど頑張れば一年以内にポーションもお家の『れんきんだい』で作れるようになるらしいから頑張らなくちゃ!


 えーっと、『えいさいきょういくきかん』はこっちの道をまっすぐ行って、あの角を曲がって……。


「あ、着いた!」


 ちょっと家から遠いけれど『えいさいきょういくきかん』に到着!


 中に入って熊のヒバナさんに抱きついてごあいさつしたら二階に行ってまあるい窓のついた教室に入る。


 そこは……ほとんど誰もいなかった。


 部屋の一番前に『ウサギのお姉ちゃん』と同じくらいの背をした女の人がいるだけ。


 ちょっと寂しい……。


「ああ、もう最初の子が来ちゃったのね。まだ集合時間には一時間もあるわよ?」


「そうなの? 早かっただけ?」


「うん。お友達が来るまでまだまだ時間があるの」


「そうだったんだ。誰もいないのかと思っちゃった」


「大丈夫。この教室いっぱいになるだけお友達が集まるから。先生とお話して待っていよう? 一番前の席にいらっしゃい」


「はーい!」


 先生のお名前はネスリンお姉ちゃんっていうみたい。


 これから一年間わたしたちの先生をしてくれるんだって!


 優しそうな女の人でよかった!


 お話を聞くと『ウサギのお姉ちゃん』より一歳年上で同じ先生からいろいろ教わっていたみたいなの。


 それで、この『えいさいきょういくきかん』ができたから錬金術の先生になったみたい。


 すごいね!


 ネスリン先生とたくさんお話をしていたらどんどんわたしと同じくらいの男の子や女の子が集まってきて、本当に席がいっぱいになっちゃった。


『えいさいきょういくきかん』ってこんなにお友達が集まるんだ!


 ネスリン先生が入ってきた皆を席に着かせて私の席の隣にも女の子が座ってくれた。


 お名前はディジーちゃん!


 私より年下の五歳で『錬金士』なんだって。


 お母さんから『えいさいきょういくきかん』に行くように言われて来たみたいで、あまり気乗りしていなかったみたいだけど一緒にお話していたら元気になってくれたよ!


 ディジーちゃんと楽しくおしゃべりをしていたら鐘が鳴っていよいよ『えいさいきょういくきかん』の講習が始まるみたい。


 最初は先生の自己紹介から。


「皆、初めまして。私が今日から一年間あなたたちの先生になるネスリンよ。職業は『錬金士』。これでも英才教育機関担当専属講師だからわからないことがあったら何でも聞いてね?」


「「「はーい!」」」


「よし、最初に『ウサギのお姉ちゃん』の講習会に参加したことがある子はどれくらいいるかな?」


「「「はーい」」」


 その質問にわたしは手を挙げたけどディジーちゃんは手を挙げなかった。


 そう言えば、わたしが『ウサギのお姉ちゃん』の講習会に初めて参加できたのって去年の秋だっけ。


「うーん、やっぱり年少の子は参加者がチグハグか。よし! 最初は錬金術でどんなことができるのか体験させてあげるね」


 ネスリン先生が皆に配って歩いたのは『ウサギのお姉ちゃん』の講習会でも使っている『れんきんだい』!


 これ、特別性らしいから街じゃ売ってないんだって。


 いつもの綺麗なお水も配ってくれたし、これで青いお水を作ればいいのかな?


「よし、準備完了! まずは青いお水、『魔力水』の作り方を説明するね!」


 ネスリン先生は『ウサギのお姉ちゃん』と同じように青いお水の作り方を説明してくれたの。


 わたしは何回か『ウサギのお姉ちゃん』の講習会に行ったことがあるからよく知っているけど、ディジーちゃんは大丈夫かな?


「これが青いお水の作り方だよ。わかった子は自由に作っていいよ。わからない子は先生に聞くかわかる子が教えてあげてね」


「「「はーい!」」」


 わたしは小さいコップに綺麗なお水を入れて『れんきんだい』の上に置いて……うん、青いお水できた!


「うぅ……」


「あ、大丈夫? ディジーちゃん?」


「ユリナちゃん。青いお水、できない……」


「ネスリン先生……は、他の子のところに行っちゃってるし、わたしが教えてあげるね!」


「うん! ありがとう、ユリナちゃん!」


 わたしはディジーちゃんの手の上にわたしの手を重ねて暖かいものを流し込むイメージをしたの。


 そうして、ディジーちゃんにもお水をかき混ぜながら暖かいものを溶かすように流し込んであげるように説明してあげると……青いお水ができた!


「うわあ……これが青いお水の作り方なんだ!」


「うん! 今度はディジーちゃんがひとりでやってみて!」


「うん!」


 ディジーちゃんは青いお水を捨てると新しいお水を用意してまた青いお水を作ろうと頑張り始めたの。


 最初はなかなか上手にできなかったけれど、何回も試しているうちにうまくできるようになっていって楽しそうに笑っていた!


 やっぱり錬金術って楽しいよね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る