225.第一次錬金術師ギルド支部採用試験とギルド支部完成
「ああ、これもダメ、こっちも没……ってこの流れ、夏の採用試験でもやりませんでしたっけ?」
本日から数日かけてギルド支部受け入れ一号となる人員の採用試験をやっています。
手順も変わらずミライさんが一次審査、それでダメだったものを僕が最終審査です。
まったく、ミライさんのチェックではじかれたものが通るわけないでしょうに……。
「『一応』、ギルドマスターの不採用承認が必要なんですよ、今の体制では」
「人事専門の部署も作りますか?」
「それはそれで縁故入門などがあり怖いです」
「『カーバンクル』は思いっきり縁故入門ですよ?」
「あのふたりはいいんです。このギルドの誰よりも腕前が上なのは全員が承知済み。しかもギルドマスターの弟子から指導を受けられるなんて機会、普通はありえません」
「ですよねぇ。今日もふたりは指導を求められて飛び回っているようですし」
あのふたりの研究が遅れないか……いや、多少は遅れた方がいい?
「愚痴を言っている暇があったら手と目を動かしてください」
「はい……」
前回よりも大幅に増えた今回の募集枠、最大三百名。
しかし、その椅子であっても希望者数から比べれば狭き門です。
一次審査くらいは通ってもらいたいのですが……それすらも過大な夢でしょうか。
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「うん、あの人は没ですね。この程度のリサーチができていないのでは『コンソール錬金術師ギルド』ではやっていけません」
「いやぁ、ミライさん。弟子ふたりを同席、それもローブなしでというのは難問では?」
「そんな事ありません!」
「ボクたちの正体を知らなかったとしても、子供に威張り散らすような方々ですから」
そう言われるとそんな気もしてきました。
将来の『コンソールブランド』を担う人材として、子供だからと侮るような人物は好ましくありません。
ですがこの調子で、定員の三百名が集まってくれるのでしょうか?
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「ふむ、結局集まったのは二百五十名あまりですか」
「今回の応募者は焦りからか質が悪かったですね。二次審査で落ちた方々が七割もいました」
「それで、人材のつなぎとめは?」
「今回はなしです。つなぎ止めるような人材がいれば採用しているでしょう?」
「それもそうですね」
「さあ、そろそろ講堂です」
「びしっと決めてきますか」
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「ミライさん、彼らが冬まで暮らせる資金は十分に渡せているんでしょうね?」
「よほどの豪遊をしなければ足ります。あれで足りないというならば、それはそれで錬金術師ギルド失格です」
「本当に手厳しい」
「ギルドマスターより優しいですよ?」
ふむ、僕ってそんなに厳しかったでしょうか。
自分の事は自分ではわかりませんね。
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「お、やっとこさ顔を出したか錬金術師ギルドマスター」
「申し訳ありません。建築ギルドマスタ-。こちらの予定で延び延びになってしまい」
「お前の忙しさは有名だから仕方がねえさ。それで、卵どもは何人雇えた?」
「二百五十と少々です」
「じゃあ、一階の部屋は三室しか使えねぇな」
「そうなんですか?」
「まあ、まずは内覧だ。ついてきな」
中に入ると受付と事務所。これはいままでのギルドと変わりません。
変わっているのは、事務所の左右に道が分かれていること、建築ギルドマスタ-の話によるとそれぞれの道の先に見習い用のアトリエがあり、一室百人、計千人まで受け入れ可能なんだとか。
「千人ですか……」
「まあ、千人が稼働できるのはまだまだ先だろう。二階に行くぞ」
二階には一般錬金術師の部屋。
こちらも百人ずつの部屋が合計十室、こちらでも千人受け入れ可能です。
「一般錬金術師も千人受け入れ可能なのはありがたいですね」
「こっから上は違うがな」
三階は第二位錬金術師の部屋、こちらは七百五十人分しか用意されておらず、更に上四階になると、五百人分のアトリエしかありませんでした。
「さすがに少なすぎるのでは?」
「シュミットの連中から話を聞いて作り上げた。なんでもシュミットでも一般錬金術師に上がるのは容易いが、その先に上がっていくのは至難の業だそうだ」
「なるほど。集団教育の弊害」
「わかってもらえたようで結構。五階はそれ以上の連中の部屋。六階はギルドマスタールームやサブマスタールーム、それに付随したアトリエなんかが入ってる」
「ほとんど使わないのにもったいないですね」
「それでもギルドマスターやサブマスターの威厳ってものがある。今のサブマスターはアトリエを使わないが。将来を見据えたら必要かもしれん」
「収容可能人数が減ってしまったのは申し訳ないですが、致し方がないと」
「そういうことだ」
早々うまくはいきませんか。
簡単な事ばかりではないですね。
「そういや、今回の新人どもに基礎を教えるのは第二位錬金術師どもか?」
「はい。本来なら僕が教えたかったのですが……」
「『カーバンクル』様方の苦情が来るのでやめてください」
「……とのことで」
「いいことだぜ。お前もいい加減、新人教育から離れるべきだ」
「そうですか」
「こっから先、一気に人員を増やしていくんだろう? なら、お前個人の力じゃ無理だよ」
「ですよねぇ。そろそろ独り立ちの季節ですか」
「そういうこった。採用試験はともかく、新人教育はお前の手から離すべきだ」
「わかりました。僕は問題が起きたときの待機要員ということで」
「そうしろ。さて、それじゃ、建物はしっかりと引き渡したぞ」
「受け取りました。こんな巨大な建築物、ありがとうございます」
「熟練工への指導にもなった。お互い様だ」
後ろ手に手を振ってギルド支部から立ち去って行く建築ギルドマスタ-を見送り、僕とミライさんも支部をあとにします。
なお、後日、支部を確認しに来たところ、何匹かの聖獣がすでに棲み着いていました。
こういうことには手が早い。
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