937. 呪いの除染作業現場

 午前中の間に建築ギルドマスターへと道具を届け、昼食を済ませてから向かったのは邪竜たちに汚染された各地の除染作業を行っている現場です。

 こちらは普通の人ではどうにもならないので聖竜たちがメインを担当し、普通の聖竜ではどうにもならないところを古代竜エンシェントドラゴンやアリアが担当することで対処しています。

 ですが、こちらもあまり作業が進んでいないのですよね。


「カイザー、こちらはどのような状況ですか?」


『うん? スヴェインか。見ての通り、あまり状況は変わっていない。最上位竜以下の邪竜に汚染された地域もなかなか除染できないのに、古代竜エンシェントドラゴンや『帝』が汚染した地域もある。特に『帝』が汚染した地域はアリアでしか除染できないのが難だな』


「やはりカイザーでも無理でしたか」


『地中の奥深くまで呪われてしまったからな。アリアの神聖の精霊ならばそれも除染できる。情けないがアリアに頼るほかない』


「除染する方法があるだけよしとしましょう。僕はアリアの様子を見てきます」


 再び除染作業へと戻って行くカイザーと別れ、僕は精霊の魔力を感じられる方向へと向かっていきます。

 その先にはやはりというべきか、アリアがいました。

 ただ、魔力を常に消費しているせいか、顔に疲労の色が見受けられますね。

 少し休ませてあげないと。


「アリア、少し休みませんか?」


「スヴェイン様。……そうですね、少し休みましょう」


「ここはまだ除染が完全ではないようですね。別の場所へ移動しましょうか」


「はい。行きましょう」


 まだ汚染の影響が残っている土地を離れ、除染の終わった土地でアリアを休ませます。

 アリアが呪いを除染する際、アリアに呪いの影響がおよばないようにユニが守っていたようですが、それ以上に魔力の消耗が激しかったようですね。

 アリアにしかできないこととはいえ、少々無理をさせているでしょうか。


「アリア、明日は休みにしませんか?」


「いえ、もうしばらくは続けます。汚染された土地が残っていると、そこからさらに汚染が広まってしまうようなのです。汚染のひどい箇所はすべて除染してしまいませんと」


 うーん、なかなか難しいようです。

 かといって、僕も手が離せません。

 ギルド評議会の一員としての作業もありますし、各地の伝手を頼っていろいろと確認をする必要もあります。

 そうなると、手が空いていそうで手伝いになるのは……彼女たちですかね。


「わかりました。明日からはニーベちゃんとエリナちゃんを応援に来させましょう」


「ふたりを? 大丈夫なのですか?」


「ふたりも神獣様からいただいたローブのおかげで、呪いに対する耐性は僕たち以上の物があるはずです。除染についてはセイクリッドブレイズによる除染しかできませんが、汚染が広がるのを食い止めることはできるでしょう」


 僕の提案に対し、アリアは少し考えたあと頷いてくれました。

 あのふたりも最近は僕の事務仕事を手伝ってばかりだったので、こちらの方が楽でしょう。

 ふたりにも書類仕事は教えなくてはいけないんですけどね。

 それはまた、追々ということで。

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