916. 南からの妨害

 子供向け教習会場探しもトントン拍子に場所が決まっていき、北、東、西にそれぞれ3カ所ずつ設けることができました。

 あとは改装が終われば教習会も始められるのですが、ここで困ったことが。

 南の関係者からの脅迫や妨害が一切来ていません。

 ここまで大々的にやっているのになにもやってこないとはいっそ不気味です。

 一体どういうことでしょうか?

 コンソールでも密偵を放っていますが、西のボスにも話を聞きに行ってみましょう。


「南のやつらかい? アタシらも調べちゃいるが動いたっていう話は聞かないね。こっちも不気味に思っていたところさ」


「やはりですか。西の裏社会にも被害が出ていないと?」


「これっぽっちも出ていないね。細かいいざこざはあるが、それは飲み屋の客同士のケンカで裏がありそうな話は出てこない。本当に不気味なもんさ」


 うーん、こちらも被害なしですか。

 さすがに動きがわからないようでは話になりませんね。

 どうしましょうか?


「あの、南のボスの本拠地などはわかりませんか?」


「悪いが一切わからない。あいつ、過剰なまでの秘密主義でね」


 直接会うことも難しいと。

 うーん、八方塞がりですね。


「で、どうするんだい? こんなぎりぎりの緊張感をいつまでも続けるのは厳しいよ?」


「仕方がありません。僕が直接、南のボスの支配地域に行ってみます。それで動きがあれば儲けものでしょう」


「危険な賭けだがそれが一番か。気を付けるんだよ」


「はい。しくじったりはしませんよ」


 こうして、僕は新市街南側に足を踏み入れました。

 ですが、そこはあまり活気のないゴーストタウンのような街と化しています。

 街の人はちらほらと見かけるんですが、本当に活気がありません。

 これはどういうことでしょうか?

 ちょっと街の人に聞いてみましょう。


「あの、すみません。少しよろしいですか?」


「おう、なんだい?」


「新市街の南側だけやけに活気がないというか、人気がないのはなぜでしょう?」


「ああ、それか。ほかの地域にギルド評議会からてこ入れが入っただろう? でも、南側にはなにもおこぼれがなかった。柵のない連中は、みんなほかの地域に移って行ったよ」


「そうなると、あなた方は柵があるということでしょうか?」


「う、それは……」


 ふむ、表では話しにくいことですか。

 ちょっと正体を明かして聞いてみましょう。

 僕はギルド評議会の紋章が入ったバッジを見せて再度話しかけます。


「失礼、僕はギルド評議会の一員、スヴェインです。南の暗黒街を統べるボスを追い詰めるために南には手を出せないでいました。なにか情報があれば提供を」


「あんたがギルド評議会の。確かにその紋章はギルド評議会のもんだ。わかった、少し話をしよう。あんたが探している南のボスはもうコンソールにはいない。とっくに尻尾を巻いて逃げ出しちまった。だが、その手下どもは残っていてな。それぞれのシマを守り続け、ときには奪い合うって構造だ」


 なるほど、それで南からは何の妨害もなかったんですか。

 しかし困りました、これでは南も制御不能ですね。

 今回は相手の拠点などもわからない以上、僕が出るしかありませんか。

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